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13-1-懺悔と約束

「返事は今じゃなくてもいいって言っただろ」 まるで自分から告白するようにド緊張の面持ちでいた柚木はキョトンした。 「へ……?」 「来週か来月か来年か」 「そ、そんな先!?」 谷はクックと笑う。 月曜日の朝、登校してくるのが遅い彼を玄関で待ち構え、人気のない渡り廊下まで引っ張ってきた柚木は首を左右に振った。 「そんな長く待たせること、できないよ……」 「今、お前がバイオレンスな暴君にぞっこんなのは明白だし」 「……」 「案外、アレがアイツの本性だったりするのかもな」 「……おれは二重人格だって思うようにしてる」 半袖シャツにベストを着用したオメガ男子は、無造作ポニテ結びがよく似合うアルファ男子をじっと見上げた。 「そう思ってるんなら、なんで告白してきたんだろ?」 「意思表示はしておこうと思いまして? それに来週か来月か来年か、アイツに飽きてるかもしれませんし」 「……谷くんだっておれに飽きてるかもしれないじゃん」 カーディガンから脱してブルーのスクールシャツの袖を捲り、シンプルな革のブレスレットを色白の手首に引っ掛けた谷は、柚木を覗き込んだ。 「来週も来月も来年も、その先ずっと、お前のこと好きでいる自信ありますけど?」 雨の匂いがする校舎の片隅。 好戦的な三白眼は特別なクラスメートだけをその視界に映し込みたくて、もっと距離を縮めようとした。 「ッ……近い!!」 赤面した柚木は、予鈴が鳴り渡り、今度は顔を青くして谷の手首を掴んだ。 「遅刻になるっ、早く行こっ」 「遅刻になったら完全ユズのせいだな」 「うう……っ」 金曜日の掃除時間に告白されて週末を跨いだ今朝、多少ギクシャクしていたはずが、普段通りのスキンシップに至って教室へ駆け込む。 「あれっ」 本鈴はまだ鳴っていない。 それなのにピシッと着席したクラスメートの面々に柚木はびっくりする。 そして……教卓のそばに担任と共に立つ比良の姿に釘づけになった。

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