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「シュウくん……」 「そんな……」 身に覚えがあるアルファは一斉に青ざめ、数名のアルファは肩を竦める。 同じ階層グループでも比良や谷のように階層制に縛られない生徒は少数派ながらも存在していた。 友人でありつつも横柄な言動を見兼ねていた彼らは、比良に拒まれたオメガヘイトの同級生にこっそり同情する。 後手に回ったベータ性クラスメートのさらに後ろで成り行きを見守っていた柚木は、ハッとした。 (比良くん、ポケットに片手突っ込んでる、もしかしてまたボタンに触ってる?) 「あの、比良クン、メール教えてほしい」 「これ、ぼくのブログ、学校で何があったとか記事にしてるから、すごくどうでもいい内容だけど」 「あっ、じゃあわたしのアカウントもっ、四月の遠足の写真とかいっぱい載せてるんだっ」 控えていたベータ性クラスメートにわっと囲まれると、比良は携帯を取り出してアドレスを交換したり、登録したり、一人一人に誠実に細やかに対応した。 「メールのアカウントはこれだ。ブログは落ち着いたときに読んでみる。今はありふれた日常がとても大事に思えるから、嬉しい。水族館に行ったときは体調が微妙だったんだ、でも、とても思い出深い体験をしたから。じっくり見させてもらう」 (……神対応……) 今にも胸の前で両手を組み、うっとり見惚れそうになっていた柚木だが。 比良を中心にして出来上がった輪の外れへ、そーーーっと目を向けてみた。 阿弥坂だ。 アルファ性の中でもダントツどっぷり比良に傾倒していたアルファの女王サマ。 比良に拒絶されて大丈夫だろうかと、お人よしのへっぽこオメガはほんのちょっとだけ心配になったのだ。 柚木の心配を余所に阿弥坂は堂々とそこに立っていた。 同じ思想を掲げるアルファが比良に拒まれて意気消沈しているのに対し、自信たっぷりな様子で、敬愛と羨望を捧ぐアルファを誇らしげに見つめていた。 (さ、さすが女王サマ……強し)

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