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(やっぱり比良くんは別格のアルファだ) とどめの一撃なる殺し文句にすっかり舞い上がってしまった柚木は、しばしのお別れになると思っていた制服姿の比良を見上げた。 (マストとか抜きにして、どんなアルファよりもキラキラな魅力いっぱいな、おれの憧れのクラスメート) 「もちろん対策はしていく」 「っ……対策って、どうやってーー」 「柊一朗」 柚木は飛び上がりそうなくらい驚いた。 振り返れば、比良の母親である櫻哉が廊下を足早にやってくるところだった。 「柚木君、おはようございます」 「おはっ、おはようございますっ」 「先週の金曜日は柊一朗がお世話になりました」 ナチュラルに色づく唇を三日月に象って柚木に挨拶し、黒ずくめの櫻哉は「そろそろ来なさい、柊一朗」と我が子に声をかけた。 母親の前でも柚木の片手を握り締めていた比良は頷く。 「連絡するから」 まだ一度もメールのやり取りすらしていない彼はそう約束し、名残惜しそうに愛しのオメガを手放した。 「俺のこと待ってて、柚木」 別格のアルファの猛アプローチにへっぽこオメガはまんまと(ほだ)された。 (対策って、一体……? まさかほんとに口輪つけてくるとかじゃないよね……?) 垂れ込める雨雲の合間から貴重な朝日が差して裏庭を照らす。 離れていく比良を見送る柚木の姿が窓に鮮明に映る。 三階の渡り廊下、意中の相手を窓越しに遠目に眺めていた谷は。 何気なく視線を移動させ、そして苦虫を噛み潰したような顔を。 母親の隣を颯爽と歩く比良とバッチリ目が合った。 それは偶然だったのか。 それとも、目の前で愛しのオメガのうなじを悪戯に蹂躪されてたきた積年の恨みを晴らされたのか……。 「ばいばい、比良くん」 柚木は視界から消えるまで比良の背中を見送った。 かくして。 学校の頂点に立っていたアルファは教室を去った。 唯一の恋心を捧げたオメガとだけ再会の約束を交わして。

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