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15-1-親睦会デート

苔の広がる青々とした中庭が観賞できる和食料理屋の個室。 白木造りの室内は明るく、落ち着いた趣があり、掘りごたつで悠々と寛ぐことができる快適な空間に仕上がっていた。 (なんか旅館みたい!) カウンター席の内側にあった巨大生け簀にはしゃいでいた柚木は、和服姿の女性従業員に案内された部屋にこれまた舞い上がる。 開閉ができない嵌め殺しのフィックス窓に屈んで張りつき、興味津々に中庭を眺めた。 「紫陽花咲いてるっ、カタツムリいるかなっ」 小学生じみたことを口にして顔を輝かせていたら。 「蝸牛はさすがにいないだろうな、街中では減少しているらしい、山に行けば発見できると思う」 隣にすっと身を寄せてきた比良に真面目に回答された。 晴天に恵まれた六月最中(さなか)の土曜日。 比良は午前中に学校へ登校し、クラスメートが誰もいない教室で試験監督に付き添われ、中間テストの追試を受けてきた。 「今度、一緒に蝸牛探しに行ってみるか?」 月曜日振りに拝見する制服姿の彼に柚木はぽぉぉ……と見惚れる。 ガラス越しに。 実は今日会ってからまだまともに顔を見ていない、きっと向こうは気づいているだろう、こればっかりはどうしようもない、何せ別格アルファと記念すべき初デート、緊張と期待でいっぱいいっぱい、へっぽこオメガはどうにかなってしまいそうだった。 それに、もう一つ、緊張感を倍増させる決定的要素があった。 「蝸牛探しは当分先の話になりますね、柊一朗」 櫻哉だ。 比良は初デートにオメガの母親を連れてきたのだ。 マスト対策のために。 (いやー……まさかのお母さん同伴……デートというより親睦会……?)

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