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「……エビ天大好きです」
「じゃあ、それにしよう」
全身ファストファッションコーデ、でも地道にコツコツ溜めてきたお小遣いで昨日買い揃えたばかりの新品に身を包んだ柚木は、渋々頷いた。
(い、一番安いのにしようと思ったのに)
「柚木、今日は新品の服を着てきてくれたんだな」
(え? なんでバレて……?)
「値札がついてる」
「!!!!!!!」
うっかりにも程がある凡ミスをかましてしまった柚木、当然、真っ赤になった。
自分で確認しようとポロシャツの襟元を両手であたふた探った。
「待って」
比良の言葉に忠実にピタリと動きを止める。
「じっとしてて」
比良はおもむろにオメガの聖域に顔を近づけた。
ネームタグに取り付けられていた値札のヒモを、慎重に……ブチッと噛み千切った。
「取れた」
何事もなかったかのように無敵スマイルで値札を手渡されて、柚木は、予想外のワイルドっぷりにさらに激しく真っ赤になる。
とりあえず「あ、ああ、ありがとう」と隣の比良に礼を言い、向かい側の櫻哉には「す、す、すみません」と、とりあえず自分のおまぬけっぷりを詫びておいた。
櫻哉は我が子の振舞に対して微苦笑していた。
そして柚木には首を左右に振ってみせた。
「私の方こそ、柊一朗が突拍子もない真似をしてしまって申し訳ないです」
(なんかもう帰りたいです、帰って大豆とごろごろしたいです、ハイ)
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