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「ちょ……ちょっと、マストくん? 何やってんですか……?」 「今、何考えてた」 四方からの好奇な視線など、まるで眼中にない<マストくん>は視界の中心に柚木を据えて命令する。 「俺といるんだから、俺のことだけ考えてろ」 点滅を始める歩行者信号。 柚木の視界も強烈な陽光と凄味すら覚える深紅の眼差しにチカチカと瞬いた。 (赤い目に呑み込まれそう……、……はッ!!) 「とりあえず帽子か眼鏡買おう!!」 マストの外見的特徴である赤い目が周囲の目に触れないよう、只今金欠の柚木は百円均一のお店へ駆け込んだ。 「わ~、結構いろいろあるな~」 「眼鏡なんか邪魔くさい」 もちろん彼も連れてきた、目を離していると勝手に店内を巡ろうとするので、野放し防止のために腕をがっちり組んでおいた。 広々とした店内はどのフロアも多くの客で賑わっている。 様々な商品がカテゴリー分けされて所狭しと並ぶコーナーの一角、彼は眼鏡で溢れ返る回転スタンドから無造作に一つとると、片手でかけた。 「これでいいか」 バラバラと落ちた他の眼鏡を屈んで拾い、スタンドに戻す前に、柚木はブハッと吹き出す。 「な、なんでよりによってハート型!?」 「一番取りやすいところにあった」 「ふっ……ふふふ……」 まさか<マストくん>がハートのサングラスをかけるとは思わず、最初は腹を捩じらせていた柚木だが。 「え。かっこいいんだけど」 「やば、男前って何しても許される」 「うちの彼氏がしシてきたら即剥ぎ取るけど、あれはイイ、むしろサイコー」 背後から聞こえてきた女子大生の会話に、はたと笑うのをやめた。 (確かに……よく見たらかっこいい……ふざけたサングラスが高級品に見えるよーな……)

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