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「あいつは俺を部屋に閉じ込めた」 <マストくん>の回答に今度は怖い話でも聞いたみたいに柚木はヒヤリとした。 「えーと、それは……」 「部屋の外側に鍵をつけて俺を隔離した」 (って、そーいうことですか、お母さん!?) いや、おれもトイレに閉じ込めようとしたことはあったけど……。 「それって、ずっと? 鍵かけっぱなし? オンライン授業の間も?」 「俺はオンライン授業なんて知らない」 「あ……」 (そういえば) 水曜日から比良くんのオンライン授業が始まって、その日は特に問題も起きなかったけど、木曜と金曜はそうじゃなかった。 『ネット接続の調子が悪いみたいですね、一旦通信を切りましょう』 何回かそんなことがあった。 今思えば、マストくん登場の兆しが出て……比良くんが自主退場したのか、それとも先生達がそれぞれの判断で強制退場にしたのか。 「内側から一回ぶっ壊したら、もっと強力なのに替えられた」 息子を閉じ込めた母親の櫻哉。 閉じ込められた<マストくん>。 どちらの思いも計り知れない。 柚木は彼の腕をぎゅっして「お母さんを傷つけちゃだめだよ」と念を押すことくらいしかできなかった。 「お前、俺に命令してばっかりだ」 しんみりしていたはずが、聞き捨てならない台詞にへっぽこオメガはしかめっ面と化す。 「はい? 逆じゃ? マストくんの方が命令魔でしょーが」 「眼鏡かけろ、目立つな、暴れるな、命令ばっかりだ」 「おれはいろいろ心配してるだけ!」 彼は言い返してくる柚木のつむじをジロリと見下ろした。 がぶっ 「ひッ!!」 まさか頭をバクリされるとは予想だにせず。 素直に悲鳴を上げ、ぱっと頭上を仰げば、あっかんべーしている<マストくん>が視界いっぱいに広がった。 「ばーーーーか」 腹が立つやら、かっこいいやら、ドキドキするやら。 一度に色んな感情がどっと押し寄せてきて柚木は口をパクパクさせた。 「なんだ、口寂しいんならキスしてやる」 「違う違う違う違う!!」 本当にキスしようと顔を近づけてきた<マストくん>の口をがむしゃらに両手で押さえる。 「派手なイケメンがいちゃついてる」 「うらやまし」 (ヒィィ……目立ちたくないのに目立ってる……!)

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