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「それとも彼らと同じ穴に棲んでる貉? 共食いがお望み? 不味い食事でもするためにここにいるの?」
阿弥坂に詰問された少女は今にも泣き出しそうな顔で首を左右に振った。
「それならさっさと逃げたらいいのに。とんだノロマね」
誰が悪者なのかわからなくなってきた柚木の視線の先で女王サマは動いた。
男の一人を力任せに横に押しやり、囲いに隙間をつくると、自分と同年代らしき少女の腕をこれまた力任せに掴んだ。
「ぃ、痛 ぃ……」
痛がる彼女を無視し、囲いから引き摺り出す。
柚木達のいる方へ向かって無慈悲に突き飛ばした。
「わわっ……」
危なっかしいヒールで転んでしまわないかと心配した柚木だが、少女はかろうじて持ち堪えた。
アスファルトの上で踏ん張り、小鹿みたいに覚束ない足元でよろよろ姿勢を正すと、阿弥坂を恐る恐る見やった。
「何」
「ぁ……ぁの……」
「用がないなら自分のテリトリーに早く帰りなさい」
女王サマに冷たくあしらわれた少女はたどたどしい仕草で頭を下げた。
ヒールをカツカツ言わせ、柚木達の横を俯きがちに擦り抜け、路地裏から去っていった。
(やり方は優しくないけど、なんかずっとプンスカしてたけど)
また助けてあげたんだ。
おれには到底できっこない。
(さすが女王サマ、強し)
「あーあ、逃げちゃった」
「ムジナってタヌキだっけ? かわいータヌキちゃんだったのになー」
「かるーいおばかちゃんかと思ったら、案外かたくて、そこがまたそそられたのに」
そう言いつつも阿弥坂が少女を逃がすのを一切止めようとしなかった三人。
「代わりに相手してよ」
「君、モロにアルファだよね」
「アルファの女って、どんなカラダの構造してるのか詳しく教えてくんない?」
どうにもベータ女子からアルファ女子に狙いを変えていたらしい。
阿弥坂よりも上背のある彼らは下品な笑みを浮かべて彼女を取り囲んだ。
(あんなガラ悪めの輩系が相手だと、さすがの阿弥坂さんもピンチなのではーー)
「ベータのクズと話すつもりはない」
(いやーーーーーー!!!!)
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