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「やっぱりアルファって違うよなー」 「まー、そうツンツンしないで」 「キャップかぶってても美人ってすぐにわかるの、相当なレベルだわ、これ」 クズ呼ばわりされた彼らは立腹するどころか妙なテンションで盛り上がった。 数メートルの距離をおき、女王サマの過激な発言にヒヤッとさせられた柚木は<マストくん>に耳打ちで相談する。 「ど、どうしよう、このままだとケンカになる」 「俺には関係ない」 彼はとことん無関心だった。 手持無沙汰なひと時、さっきから柚木のお尻を撫でて退屈を紛らわせていた。 「またッ……おけつ撫でてる場合かっ……ほんとどうしよう、あの人達、目がいっちゃってる……関わっちゃ駄目なタイプだったんだよ……」 (あんまり刺激しないで、やんわりお断りしてくれたら……) 「今すぐ退け」 柚木の一縷の望みをことごとく断ち切って、阿弥坂は、トランス状態に近い有り様で浮ついている彼らを睨みつけた。 口調すら乱暴になっている。 どちらの手もかたく拳を握っていた。 「あの二人と楽しむんならオレらもまぜてよ」 「アルファ女と乱パなんてレアすぎ」 「あ、でも受け身は勘弁な、女に攻められるなんてないわー」 ーーと一回くらいヤッてみたかったんだよーー アルファ性の女体を中傷する差別的なスラングだった。 その上、言い放った男は阿弥坂のキャップを了解もなしに取り上げ、まともに目の当たりにした彼女の顔立ちに過剰にテンションを上げた。 「ガチの国宝級、これだったら攻められるのもアリか、新境地開拓できそうじゃね?」 しょうもないことを抜かして、オーバーサイズ気味のツナギに覆われた胸元へ手を伸ばそうとーー 阿弥坂は下卑た手が我が身に届く前にその腕を素早く捕らえた。 捕らえたまま、くるりと体を回転させ、相手の背後に踏み込む。 背中合わせになり、男が体勢を崩したところで、襟首を引っ掴み、アスファルト目掛けて上体から投げ落とした。 舞うように靡いた長い黒髪。 「……うはぁ……」 合気道の技の一つ、一連の動作が神速で滑らかだった四方投げに柚木は感動の声を上げた。

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