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柚木は……ベッドのすぐそばでカチンコチンになった。 瞬く間に熱が増して、頭の芯がぼんやりして、足元がグラグラしているような錯覚に陥った。 「おいで」 それまで寝具に沈んでいた手を差し伸べられると、あまりの胸キュン仕草に心臓が木っ端微塵になりかけた。 (今、この手をとったら比良くんにキスされる) まるでカウントダウンさながらに体内に大きく響き始めた鼓動。 緊張と恥ずかしさで棒立ちになっている柚木を、真白な寝具がよく似合う比良は、もう一度誘う。 「今から俺とデートし直そう」 へっぽこオメガの奥二重まなこが真ん丸に見開かれた。 眉間の縦皺は消え失せ、枕元の間接照明の光を吸い込んで磨きのかかった黒曜石の瞳を遠慮がちに見つめ返す。 指の先まで包容力溢れる手に手を重ねた。 そのままベッドの上へ導かれる。 「お……お邪魔します……」 座ったままお姫様抱っこするように横抱きにされ、柚木は、もう逆上せそうになった。 「比良くん、あの……せめてお水……一口くらい飲んだ方が……」 手にしたままのペットボトルをついつい顔の間に翳せば別格のアルファは言い切った。 「先に、今すぐ、柚木がほしい」 へっぽこオメガは、もう、何も言えなくなった。 覚悟を決めて一足先にぎゅっと目を瞑る。 相も変わらず奥手なリアクションに表情を和らげるかと思いきや。 少し苦しげに、眉間の縦皺を密やかに復活させ、比良は柚木にキスをした。

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