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先週の金曜日振りになる口づけ。 最初は微熱の在り処を確かめるように触れてきた唇。 そっと重ね合わせて、愛しい感触に身も心も傾け、再会の喜びを噛み締めようとした。 「……」 うっすらと目を開け、必要以上に力を込めて瞼を閉ざしている柚木を見、比良は眉間の縦皺を一つ増やす。 まるで小さな(とげ)を呑み込んで胸をチクチク刺されているような、何とも言えない気持ちになった。 「ッ……」 未熟な唇を抉じ開けて口内を訪れた彼の舌先。 どうしようと対応に迷い、奥に引っ込んでいた消極的な舌を探し当て、絡みつく。 柔らかな水音を紡いで舌尖同士を緩々と擦り合わせた。 「ふ……っ……っ」 眉間の縦皺の復活に気づいていない柚木は瞼をピクピクさせる。 唇の内側で生じる濃厚な摩擦感。 横抱きにされた状態で深く口づけられ、胸の上で両腕を縮め、息苦しそうに鼻で呼吸した。 「んっ……?」 密着するのに躊躇して逃げがちだった体を持ち上げられた。 ベッドからお尻がやや浮いて、柚木はバランスをとるため比良の首に咄嗟に両腕を回す。 (これじゃあガチのお姫様抱っこだ) 次にお尻が着地した先は胡坐を組む彼の股座ど真ん中であり、密着度が倍増した体勢に気が遠くなった。 「……柚木」 呼号された柚木は素直に目を開ける。 すぐそばにある黒曜石の瞳を怖々と見やった。 「もっと、舌、出してくれるか?」 まさかの欲求にさらにさらに気が遠くなった。 「え……え……えーと……その……」 「嫌か?」 「嫌っていうか、その、恥ずかしい、ハイ」 自分の肩に両手を引っ掛けてモジモジ恥じらう柚木に比良は尋ねる。 「恥ずかしいキス、俺とはしたくないんだ……?」 へっぽこオメガはぎゃふんとなった。 憧れてやまないアルファのクラスメートに至近距離から惜しみなく見つめられ、最早逃げ場も拒否権も失われ、やむをえずに小さな声でボソボソと回答した。 「な……なるべく善処します……ハイ」

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