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胸元に到着した利き手。 淡く色づく突起が比良の掌に軽く擦れた。 「ッ……」 ムズムズ感が加速して柚木は口をへの字に曲げる。 「あ、ちょ……っ……待って……」 膨らみなどない殺風景な胸をポロシャツの下で撫でられ、顔から強レベルの火が出そうになった。 「マストの俺はどんな風に柚木に触れた?」 「っ……自力で思い出してください」 「俺はマストになっている間のことを思い出せないのに。意地悪だな」 ぷに…… 「ぁ」 胸の突端を抓られる。 反射的に妙な声が出、ふかふかなダブルベッドに預けていた腰がバネ仕掛けみたく跳ねて、柚木は焦った。 「ち……乳首……つねっちゃやだ……です」 「マストの俺に抓られたこと、ないのか?」 「……」 「あるんだろう、やっぱり」 いつになく嫉妬に駆られている比良は涙ぐむ奥二重まなこを愛でつつ、ポロシャツの下で手を動かした。 長い五指を広げ、中心に掻き集めるようにして平らな胸を揉みしだく。 上から押し上げ、いたいけな突起を指の付け根に引っ掛け、さり気なく刺激する。 「おっ……おれには、おっぱい、ないっ……そんな揉まれても困……っ……ひょぇぇ……っ」 柚木は呆然とした。 ポロシャツを捲り上げられて比良の眼前に貧相な胸を曝す羽目になり、慌てて両手で隠した。 「……」 「いや、ほんと、おれの胸なんか見ても楽しくないから! むしろテンション下がるから!?」 「マストの俺には見せてるんじゃないのか」 「ッ……マストくんは嫌がっても無理やり見るんです!!」 今にも茹で上がりそうになっている柚木に比良はほんの少しだけ沈黙した。 (優しい比良くんなら、きっとやめてくれるはず) ところがどっこい。 (あれっ?) 比良は乙女みたいに両手で胸を覆い隠していた柚木の手首を掴むと、造作なく左右へ退かし、真白なカバーに縫い止めた。

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