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「それなら今すぐ俺の好きなようにさせてくれ」 「っ……でも、おれにはむり、耐えられない」 「どうして?」 「多分、死ぬと思う」 「死ぬ?」 「うん……死んじゃう……憧れてた比良くんと、これ以上、え、え、えっちなことしたら……ぽっくり天に召されるはず……っ……えーと、あの、比良くん……?」 話していた柚木は目をパチクリさせる。 比良がクスクスと笑い出して「尊い」と心の中で合掌する反面、真の恐怖を冗談扱いされたような気がして唇を尖らせた。 「それなら柚木には死んでもらわないとな」 トンデモナイ発言をした彼にショックを受けた。 「ひ……ひどいよ、比良くん……ガチだからね? 実際におれの心臓もう何回も止まりかけたからね!?」 「何回も?」 柚木の膝上で自分の両手を重ね合わせ、顔を斜めに傾けた比良は憮然としている柚木に笑いかける。 「柚木、先週にも似たようなことを言ってたな。五秒以上、俺と目が合ったら心臓がもたないって」 「うん」 「大丈夫」 何を根拠に大丈夫と言っているのか。 理解できない柚木は益々唇を(とん)がらせる。 比良は笑んだ口元のまま世迷言を(うた)う。 「柚木の心臓が止まったら、きっと、俺の心臓も同調(シンクロ)して止まる」 週末の夜、宵闇に燦然と輝くホテル。 多くの客が食事や娯楽を楽しむ傍ら、静かな客室フロアの一室で別格のアルファは愛しいオメガに悪戯っぽく囁いた。 「ベッドで二人で心中してみようか」

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