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「球技大会で準優勝したのは素晴らしいことだと思う。必死に頑張ったんだろう。でもまさか胴上げされるなんて」 「比良くん、なんで胴上げのこと知ってるの……」 「皆がSNSに写真や動画をあげていた」 「あれは不可抗力だったというか、あっという間の出来事で……」 「正直、いい気持ちがしなかった」 「ひょぇぇ……」 隣に座る比良は包み隠さずダイレクトに柚木に嫉妬心をぶつけてきた。 「胴上げのとき、何人もの手が柚木に触れたのかと思うと、むしろ怒りが湧いてきた」 携帯越しに目の当たりにした、クラスメートのアルファに頭を撫でられたり肩を組まれたりしている姿に、どれだけ苛立ちを募らせたか。 「谷も阿弥坂も。油断できない。ことあるごとに柚木を狙っている」 はぐれアルファとアルファの女王サマに関しても敵意を剥き出しにする。 「えぇぇえ? そんなわけ……」 「二人から好意を伝えられたことはないか?」 「……」 「あるだろう?」 谷からは告白された。 ただ、比良に心酔している阿弥坂が、あれだけ嫌いだと豪語していた自分に好意を抱いているなんて柚木にはピンとこない話だった。 「阿弥坂さんは、へっぽこなおれのこと鍛えようとしてるだけーー」 「阿弥坂も柚木に気がある。絶対にな」 比良は食い気味に断言した。 隣で面食らっている柚木の方へ顔を傾け、大きく見張られた奥二重まなこに哀願した。 「教室にいなくても俺のこと忘れないでくれ、柚木」 「……そこのコインパーキングに停めますね」 後部座席で交わされた会話は運転席につく櫻哉に当然ほぼほぼ筒抜け状態にあった。 柚木は途方に暮れる。 母親への遠慮や注意もなしに胸の内をありのまま伝えてくる比良に面食らいっぱなしだった。 「!」 シート上でぐっと手を握られたときは。 熱風どころか燃え盛る炎にメラメラ炙られているような錯覚に陥った。 「柚木は俺の救い(サルベーション)。だから誰にも渡したくない」

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