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「柚木、大丈夫か?」 「おばけおばけおばけおばけっ」 「あれはお化けじゃない。カラスだ」 「ふぇぇえ……?」 「時々、ああやって窓に体当たりしてくるんだ」 「ガーーーーッ」 「うわ、ほんとだ、鳴いてる!」 バルコニーでガーガー鳴き出したカラス。 なかなか喧しい。 「あれさ、なんか怒ってない……?」 「父が言っていたんだが。ガラスに映る自分自身を威嚇しているのかもしれない」 「えぇぇえ……放置してていーのかな? 窓、突き破られたりしないかな!?」 「大丈夫だ。その内、巣に戻っていく」 「そ……そっか」 「バルコニーに巣をつくられたら問題だけどな」 「そだね、由々しき大問題だね……」 恐怖心が和らいできた柚木は……自分を抱き止め、それから離そうとしない比良の腕の中でみるみる発熱していった。 (いっぱい、いい匂いがする) 冷水を浴びてきたのか、ひんやりしていて、触れていて気持ちのいい肌。 爽やかなマリンムスクの香りが鼻孔どころか胸にまで満ちていく。 「柚木はお化けが苦手なんだな」 「う。さっきは、ちょっとびっくりしただけで……」 「ちょっと、どころじゃなかった。球技大会の練習を頑張ったおかげだろうか、力強いタックルだった」 「っ……嗅がないで、比良くん」 「……」 「う〜〜……嗅いじゃだめだってば〜〜……」 髪に鼻先を沈めてクンクンしている比良に柚木は恥ずかしそうに縮こまった。 日差しが差し込む二人きりのリビング。 出し抜けのハグに一気に気持ちが高まって、いい感じの雰囲気になった、次の瞬間。 バン!! 「ガーーーーー!!!!」 荒ぶるカラスによる衝撃音と鳴き声がいい感じの雰囲気をバッサリ一刀両断した。 「……窓ガラス、ほんとに大丈夫かな、比良くん」 「父がたまに餌をあげているんだが。今日の分をほしがっているのかもしれない」 「……管理人さんに怒られるよ、それ」

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