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22-10
柚木はピタリと笑うのを止めた。
他者を易々と魅了する別格のアルファの微笑みを一身に受け、愛情の鎖に心臓をガチガチに束縛されて、恍惚とも戦慄ともわからない感覚に囚われた。
(食べられちゃってもいい)
そんな危うい思いが湧いてくるくらいに魅入られた。
睫毛を伏せ、伏し目がちになった比良はおもむろに身を屈めていく。
狭まっていく隔たりに柚木の瞼は余計な力を孕まずに、自然と閉ざされていく。
キスされる。
そう思って健気に待っていたら。
「……」
額に軽く口づけられた。
この上なく優しいライトキスだった。
「いつか柚木と二人で旅行に行けたらいいな」
頭を撫でられて柚木は目を開ける。
「ご当地ラーメンを食べて回ろう」
長い五指が丁寧に髪を梳き、身も心も溶けていきそうな心地よさに骨抜きになりかけながらも、こっそりがっかり、した。
(口にされると思ったのに)
……。
…………。
がっかりするなんて何様だ、おれ。
欲求不満か、おれ。
へっぽこのくせに、スッポンのくせに、おっちょこちょいのくせに!!
比良くんからのお恵みデコチューを物足りなく感じるなんて、ばかばかばかばか……!!
(意識しすぎて頭パーンしそう)
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