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22-14
「んが……」
天井のライトはつけっぱなし、携帯を握ったままベッドの上で寝落ちしたへっぽこオメガ。
昨夜はお泊まりを直前にして気分が高揚し、純粋に寝付けない夜を過ごしたため、その反動がモロに来たようだ。
時刻は夜十一時過ぎ。
やっと携帯を手放し、気持ちよさそうに寝返りを打って、締まりのない寝言をむにゃむにゃ繰り出す。
ワンコ大特集が影響したのか。
犬の夢を見た。
愛犬の大豆と秋田犬が仲睦まじく戯れている、ほんわかにも程がある夢だった。
(うちの大豆地球一かわいい、秋田犬モフモフかっこいい)
モフモフに埋もれて正に至福のひと時。
夢なら覚めないで状態。
うつし世はゆめ、よるの夢こそまこと、そんなことを謳いたくなるザ・理想郷。
(このモフ心地、たまら~ん)
まだ一度もお目にかかったことのない秋田犬の触り心地に柚木は酔い痴れた。
(ふっかふか! ふっかふか!)
立派でお行儀のいい秋田犬であるのをいいことに触りまくった。
「んふふ……」
「……」
「よしよし……」
「……」
「いいこ、いいこ……」
「……ふ」
(……おや……?)
そのとき柚木はようやく気がついた。
夜の夢の中ではなく現世で何かに触れていることに。
(……?……)
寝惚けている柚木はしょぼしょぼした目を開く。
点けっぱなしにしていたはずのライトは消されて視界を覆った薄闇。
「う……?」
眠たげな半目で凝視している内に薄闇に浮かび上がってきたシルエット。
愛犬を相手にする飼い主の手つきで柚木に頭をナデナデされていた彼が、笑ったのが、わかった。
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