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23-1-お泊まり二日目

お泊まり二日目の朝。 玄関寄りのサニタリールームで洗顔を済ませた柚木は、ぎくしゃくとした足取りでリビングに向かった。 現在時刻は十時過ぎ。 なかなかの「おそようさん」である。 いろいろ気まずい手前、扉を細く開けて中を窺ってみれば、柚木の起床を察するのと同時に朝食の支度を始めていた比良がそこにいた。 「おはよう、柚木」 胸ポケットのついたオーガニックコットンのTシャツに動きやすそうな裾リブ仕様のジョガーパンツ、このまま街までお出かけしてもおかしくない部屋着コーデだ。 ダイニングテーブルのランチョンマット上に食器を並べている姿は目映く、柚木の起き抜けの視界では後光が差して見えた。 「あ……ありがたや……」 「柚木? 両手を擦り合わせてどうした? またラッコの真似してるのか?」 「っ……おはよう、です、比良くん」 昨夜、比良は。 柚木と一緒に寝ることはなく自室へ一人戻っていた。 『これ以上一緒にいたらフライングしそうだ』 (今日、おれ、比良くんに抱かれちゃうんだ) え、え、え? 今日のいつ? まさか朝ごはん食べたら、すぐ? まさかまさか朝ごはん前とか!? 「柚木はカフェオレでよかったか?」 てんぱりかけていた柚木は、はたとテーブルの向こう側に立つ比良へ目をやった。 いつも通りの彼に優しく笑いかけられて、てんやわんやしていた胸に穏やかな光が射す。 緊張や不安が薄れていく。 代わりに込み上げてきた途方もない恋しさ。 このアルファに自分のすべてを捧げたいと思った。 「うん」 柚木は照れくさそうな笑顔で頷いた。 昨夜の問いかけに対する返事の意味も込めて比良に回答してみせた。 「アイスココアもあるしオレンジジュースもある」 「比良くんは何飲むの?」 「俺はアイスコーヒーだ」 「じゃあ、やっぱりおれもアイスコーヒーにする」 「わかった。牛乳と砂糖は?」 「いるっ」 やっぱりスリッパを履き忘れてスニーカーソックスでリビングを進み、柚木は比良のお手伝いをした。 「すごい、このサンドイッチ、中身が零れそう」 「スモークサーモンとアボカド、生ハムとクリームチーズ、エビとブロッコリーがある」 「おいしそ~」 お手伝い……というより、てきぱき準備を進める比良の後を愛犬みたいにちょこちょこ追い、彼の手際のよさに逐一感心してばかりいた。 ふわふわとした幸福の繭に包み込まれているような夢心地でいた。 柚木の五感は昨日からそばにいる憧れの比良にほぼほぼ独占されていた。 ーー大雨となる恐れがあります ーー荒れた天気になるため警戒が必要です 日の光が溢れるリビングの片隅、テレビの天気予報でキャスターが深刻そうに告げる内容は耳の外を擦り抜けていくのだった……。

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