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「……なんか、ごめんなさい……」 七月の夜、冷房のおかげで涼しい比良の部屋に柚木の情けない声がポツンと落ちた。 「どうして謝るんだ?」 比良の問いかけが忠実に後を追う。 愛情に満ち満ちた手つきですっぽんぽんにされ、卓上ライトに裸身を曝した柚木は、頑なに足を閉じてベッドに横向きに寝そべっていた。 「柚木?」 足元に座っている比良を横目で見、もごもごと口ごもる。 「うん? どうした……?」 「おれの体、こんなんで……比良くんに申し訳ないなって……」 「どうしてそんなこと思うんだ?」 「取り柄なんかいっこもないし、つまらない体してるから……」 曲線に疎い骨張った体。 オメガ特有であるはずの中性的な魅力もゼロ。 自分自身でもどこに魅力を見出せばいいのかわからない、どちらかと言えばコンプレックスを催す、何もかもがやや平均以下レベルのスタイル。 まだ服を着ている比良の顔色を窺いつつ、柚木は怖々と尋ねてみた。 「比良くん、幻滅してない……?」 未だに自信が持てないでいる柚木に問われて即答するかと思いきや。 比良は無言で立ち上がるとベッドから離れた。 背中を向けられて、一気に押し寄せてきた不安の大波にへっぽこオメガは小さく息を呑む。 (おれの体があんまりにもあんまりだから、やっぱり、幻滅されたーー) 「あ」 これまでと違う涙でいっぱいになりそうだった奥二重まなこが矢庭に見開かれた。 キレのある仕草で素早くTシャツを脱ぎ、薄明かりに上半身を露にした比良に問答無用に視線を奪われる。 が、下肢の服に手がかかったところで死に物狂いで柚木は寝返りを打った。 慌ただしげに強まった鼓動。 耐えられなくて、紛らわせたくて、グーにした手の関節をがぶっと噛んだ。 (比良くんのお裸……!!) 見ていいの!? 見たらバチとか当たらない!? 天罰下らないですか!? 「う」 大いに動揺していた柚木は、ベッドが軋んで、思わず呻く。 比良が戻ってきた気配に口から心臓が飛び出しそうになった。

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