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雨が降り出した。 「初めてキスしたときも雨が降ってた」 セミロングサイズの枕に後頭部を沈めた柚木は一つの思い出を手繰り寄せる。 (……そーか、階段の踊り場で初キスしたのはマストくんの方だった……) 「……ぁ……」 左右に開かれた両足の爪先が不要な力に漲った。 薄明かりに艶めく蜜穴に満遍なく滾る熱源があてがわれて、その感触に体中が一斉に高鳴った。 「比良くんの、熱い……」 落ち着きなく身じろぎし、乾き切っていない黒髪をしんなりさせた柚木がポロリと呟けば、比良は頷いた。 入り口にあてがっただけで愛液に塗れた頂き。 力を込めずに軽くなぞれば、またさらに濡れた。 「ン」 えもいわれぬ刺激に柚木は震える。 とてもじゃないが正視できずに、しかし止める素振りは見せず、ただ明後日の方向を向いてじっとしていた。 「あ」 ぐ、と力を込めて押しつけられた。 指で解したとはいえ、まだ窮屈なナカへ挿入(はい)りたそうにしているアルファのペニスに柚木は切なげに眉根を寄せる。 (比良くんの……もうちょっとでナカに……) 押しつけられた先端が序盤の抵抗に逆らい、慎重に少しずつ蜜穴の内側へ。 膨れ上がった頂きに入り口を抉じ開けられる。 色鮮やかな熱源の天辺がゆっくり捻じ込まれていく。 「ふ、ぅ、ぅ、う、ぅ、っ」 まだ浅いながらも比良と繋がった。 柚木は陶然と身悶える。 隆々とした昂ぶりに押し拡げられ、逞しい息遣いが胎底にまで伝わってきて華奢な喉を反り返らせた。 「は……挿入(はい)ってきた……」 心の声のつもりが、ついうっかり口に出していた。 「比良くんが……おれのナカに、ほんとに、きちゃった……」 「……」 「なんか、すごく熱い……熱あるみたい……」 「……」 「こんなの平熱どころじゃない……」 ムードなど重視していられず、うっかり饒舌になってしまっていた柚木は、ふと口を閉ざす。 括れたところまで迎え入れて独りでに増した締めつけ。 蜜壺全体が騒がしげに蠕動し、比良のペニスをぎゅうぎゅう過激にもてなしてしまう。 「ん、柚木……」 低い嗚咽にも似た呼び声に柚木の鼓膜は貫かれた。 容赦のない肉圧をかけられて比良は息を潜めていた。 瞼に半分閉ざされた黒曜石の瞳がいつになく鋭い光を帯びている。 険しげで、どこか物憂げでもいて、危うい色気を孕んでいて。 性的魅力溢るる<比良くん>の姿を目の当たりにした柚木は……。 「んっっっ……!!」 自分の気持ちとは関係なしに感極まり、さらにさらに比良を締めつけてしまった……。

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