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上体を落とした<マストくん>はふくよかな耳たぶに浅く噛みついた。 歯列がやんわり食い込んで解されるように咀嚼される。 緩々とかぢられながら股座にペニスを激しく擦りつけられて、柚木は、咄嗟に片手で口を覆った。 「んっ、んっ……ンっ……ッ……ッ……ッ……!!」 下半身を過剰にビクつかせて胎底が数秒間ほど爆ぜる恍惚の海に頭ごとダイブした。 「はっ……はぁっ……は……っ……っ……マストく、ん……」 絶頂を迎えたばかりの身に挿入(はい)りたそうにしている熱源にはたと気がつくと、新たな興奮に打ち貫かれた。 反射的により蕩けた蜜穴。 息継ぎのための浮上も許されずにさらなる深淵へ沈められる。 「柚木……」 「あ……もぉ、こんな……奥……」 バスルームに規則的に乾いた音を響かせる彼に命じられた。 「いく声、次は聞かせろ」 後ろから思う存分愛されて上半身を支えきれずに柚木は崩れ落ちた。 バスタブの縁にもたれかかれば、すかさず後を追いかけてきた頑健な体。 脱力しがちなオメガを伸びやかな両腕で囲い込むとお湯をパシャパシャ言わせて律動した。 「あっ……あん……っ……一番奥っ……あたって……」 「ここがお前の一番奥か? 違うだろ……」 「ひにゃっっ……っ」 「ほらな……まだ挿入(はい)る……」 「はっ、はぁっ、はぁ……っ……おなか……いっぱいに……」 「腹へってたんだろ」 「あっ、ぁぁ、あっ、あっ」 「俺のでいっぱいになってよかったな……」 「っ……っ……これ……おなかじゃなくて……なん、か……っ」 波打つ湯船の中で余すことなく奥の奥まで貫かれる。 限界まで喉を反らして予想外の満腹感に息も絶え絶えになっていた柚木は、自分を囲う<マストくん>を見た。 「……心臓、突かれてるみたい……」 ブレる視界のほぼ中央で一際鋭く煌めいた赤い眼。 揺さぶられながらぼんやり見惚れていたらキスされた。 柚木にとっては少々きつい体勢だったが、背後を見上げる首の角度を何とかキープし、自然と唇を半開きにして口づけに応えた。 (……おれのぜんぶ、熱い……) 薄目がちな彼と視線も交える。 限りなく深みが増していく恍惚を分かち合う。 (……おれの体、マストくんでいっぱいになってる……)

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