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唐突に哀れなくらい軋み出したベッド。 連続して最奥を穿たれて柚木は彼の首筋に顔を埋めた。 「そのまま噛め、柚木」 フェロモンの立ちのぼる肌身に鼻先をピリピリさせていたら思いも寄らない欲求を突きつけられた。 「噛まないと俺がお前のうなじを噛む……ッ」 「ひぃん……っ……っ……んむっ……んーーーー……っ」 広い背中に両手の五指を沈め、柚木は、吸血鬼のこどもみたいに彼の首筋に噛みつく。 昨日、意識が飛びかかっている中で、はむっっ、した場所に吸いついた。 「んっ、んっ、んんんん……!!」 本能任せの腰遣いで追い上げられた末に……絶頂の飛沫を一思いに注ぎ込まれた。 蜜壺内で断末魔を上げるようにビクビクとのた打ち回ったペニスに導かれ、柚木の身も心も獰猛なオーガズムに食い尽くされる。 躊躇を忘れて汗ばむ首筋に思いきりかぢりつき、濡れた頭を掻き抱いた。 「くッ……ッ……」 「ん、ん……ン……ぷは……ぁ……はぁ……」 やたら長引く絶頂感に下半身を素直に反応させて抱き合う。 全身に満ちる互いの熱が心地よく、ひとつ残さずどこまでも肌を重ねたくなった。 「柚木……」 <マストくん>に頬擦りされて、キスされて、柚木は心地よさそうに喉を鳴らした。 「ん……マストくん……」 「もっとほしがれ」 「……」 「俺を求めて……」 冷えた黒髪を撫でていたへっぽこオメガはその声色にゆっくりと瞬きする。 「俺をひとりにしないでくれ」 『俺はどこに帰るんだ?』 以前、ラブホテル街の路地裏で、遣り切れない感情を抱かされた彼の台詞を思い出すと、まるで大豆にするように両手で頭をわしわし撫でた。 「ひとりにしないよ」 いつになく濡れ渡った赤い目に約束した。 「もっと撫でろ」 「よしよし」 「もっと」 正直、まだ挿入(はい)っている状態で体を動かすのは億劫というか微妙で、しかも恐ろしいことに未だに硬度を保っており、ふとした拍子に擦れてムズムズするのだが。 「よしよし、よしよし」 柚木は彼の欲求通りにしてやった。 犬扱いするなと文句を言うでもなく、大人しく頭を撫でられている<マストくん>に「おれ、いつでもマストくんのそばにいるよ」と掠れた声で誓う。 「だから、おれのところへ帰っておいでよ」 「柚木のところ?」 「うん。マストくんのこと、いつでも待ってる」 柚木の華奢な両手に顔を挟み込まれた彼は目を瞑った。 「柚木が俺の帰る場所。俺の住処。悪くない」 「なんだなんだ、偉そーに」 「大好きだ」 「……」 別格のアルファのこどもっぽい告白。 へっぽこオメガの心臓(ハート)は跡形もなく蕩け落ちそうになる。 「おれも大好き」

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