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比良はおもむろに上体を起こした。
絶句しているへっぽこオメガの両足を掴み、そのまま脱力気味の体をストレッチさながらに折り曲げるようにして、ぐ、と上から太腿を押さえつける。
繋がっている場所が自分達に丸見えになるというこっぱずかしい体勢に柚木は口をパクパクさせた。
「ナカも濡れてるな。今から俺のを注ぎ込んで前の分はーー……」
正直なところ、自分自身の意識が眠りについているマストの間に柚木に注ぎ込まれたものが比良は疎ましくてならなかった。
「掻き出したい」
「へっ?」
「俺で上書きしたい」
「はっ?」
ナカでゆっくりとペニスが動き、蜜穴をじっくり行き来するのがバッチリ見え、またすぐそこまで押し寄せつつある恍惚の波に柚木は狼狽える。
「っ……ナカはだめ」
「俺だけ駄目なのか?」
「ぅぅ……ぅぅぅぅ……」
「ほら、こんなに……マストの俺には注がれてるのに」
緩々とした抽挿に合わせてとろとろと溢れてくる<マストくん>の色濃い痕跡。
唇をヒクつかせた柚木は両足を押さえつける比良の手を咄嗟に掴んだ。
「……比良くん……」
奥二重まなこの必死な眼差しに訴えかけられて、ほんの束の間、目蓋に閉ざされた黒曜石の瞳。
「その、比良くん、時々強引なところもあるけど、むりむり実況続けるときもあるけど……ほんとに嫌なことはしないって、おれ、わかってる……から」
比良は仄かに笑う。
昨晩に柚木のナカに致したのは<マストくん>だけではなかった。
ふとした拍子に目覚めた<比良くん>も。
このベッドで虚脱しかかっていたオメガに抑えきれずに過激な愛情を何度か注ぎ込んでいた。
うなじにキスマークを残したのも<比良くん>だった。
我が身を煽る聖域に目が眩んで所有欲に屈した。
噛む代わりに自分のものだという証を刻みつけた。
「……俺がどれだけ君に夢中か、それはわかってくれたか、柚木」
こっぱずかしい体勢はやめてくれたが、まだナカに居座られている状態で悶々としていた柚木は、不思議そうに奥二重まなこをパチクリさせる。
『俺がどれだけ君に夢中になってるか、わからせてやる、柚木』
夢うつつに聞いたアルファの囁き。
てっきり<マストくん>のものだと思っていた。
(もしかして、昨日、比良くんも……)
「ごめん」
柚木を力一杯抱きしめた比良は哀願する。
「俺を嫌いにならないで」
(マストくんとはまた違う、まだおれが知らない比良くんがいるんだ)
昨夜、一目惚れの初恋だったと明かされ、番になりたいと告白までされていた柚木は思う。
(おれの憧れのひと)
これから、もっといっぱい、一生かけて比良くんのこと知りたい。
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