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「おれ、その……そんな早いタイミングで番になるって思ってなくて。でも比良くんと番になるなんて夢みたいな話で……」 体中に響き渡る鼓動。 地面がグラグラしているような錯覚に負けじと、床を踏みしめ、歯切れは悪くも精一杯の返事を柚木は絞り出そうとする。 「夢じゃない」 比良に両手を握り込まれると、そのあたたかさが心にまでじんわり染みて、声にならないため息が洩れた。 「俺と番になってほしい、柚木」 (プロポーズみたい、じゃない、これはプロポーズだ) 憧れのクラスメートから求愛されて「これまで」の思い出が次から次に脳裏に蘇り、頭の中どころか胸までいっぱいになる。 目の前で微笑んでいる別格のアルファと未来を綴っていく、二人の「これから」に心が高鳴る。 グラグラしていたはずの床から足が離れ、背中から翼でも生えたみたいに舞い上がりそうになった。 「……おれなんかでいいのでしょーか……?」 今はシャツの襟で隠れているが、まるで念入りに予約しておくかのように柚木の聖域にキスを繰り返していた比良は「<なんか>なんかいらない」とやんわり伝えた。 (おれが相手でも映画化したらヒットするかな) 桜の薫る始業式真っ最中、妄想さながらに勝手に思い描いた彼の未来。 その隣に自分が並ぶ、こんなにも幸せな奇跡が我が身に舞い降りてくるのかと、へっぽこオメガは思わず笑った。

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