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(今は共通テストと二次のこと考えるだけでいっぱいいっぱいだ)
資格取得まで考える余裕ゼロなのですが!
公認心理師と臨床心理士の違いがわからないのですが!?
「柚木はちゃんと計画を立てているんだな」
絶品なるチーズケーキを大事そうにちびちび食べていた柚木は、自分には不相応な褒め言葉だと縮こまった。
ホットコーヒーを飲み終え、真正面で頬杖を突いて相変わらず食べる様を直視してくる、シンプルでタイトな白カットソーを着た比良を上目遣いに窺う。
「比良くんは……?」
比良はオンライン授業を順調に続けていた。
学校から隔離された生活にフラストレーションを抱くこともなく、成績は至って良好、毎日欠かさず屋内の基礎トレーニングに励んで体も鍛えていた。
時々、櫻哉や昌彦と早朝ウォーキングもしている。
週末、足繁く遊びにやってくる柚木と近所を散歩する日もあった。
「高校卒業したらどうするか決めた?」
これまで聞くに聞けなかった質問を柚木は思い切って比良にぶつけてみた。
七月下旬、夏休み序盤に自分の進路について未定だと家族に伝えていた彼は腕を組み、窓の方へ視線を向ける。
鳥の囀りがしているバルコニー。
レースカーテンの向こうで羽ばたくシルエットが時折見えた。
(マストのことで大学進学も制限されるんだろーか)
そんなのって、ない。
前と比べてマストくんも丸くなってきたし、何ならもう普通に学校に来ていいんじゃないかって思う、おれは。
色々と事情があるのかもしれないけどーー
「俺も決めたよ」
柚木の奥二重まなこがわかりやすく大きく見張られた。
固唾を呑み、向かい側に座る比良の次の言葉を待った。
「大学に進学する」
自分の夢へ真っ直ぐに突き進んでほしいと願っていた柚木は純粋に喜び、大袈裟なくらい相槌を打つ、そして。
「▲▲大学の心理学部だ」
志望する進学先を聞いて見張られていた目は……点になった。
「え、え、え……? おれと同じ大学? しかも学部も一緒?」
「ああ、そうだ」
(すっっっごい偶然きたぁぁぁあ!!)
「ほほほっ、ほんとに? 比良くんもそうなんだ!? 大学に進む場合はてっきり医学部なのかと思ってたから! びっくり! うはぁ~!」
実のところ。
柚木の第一志望を聞いて比良は即断即決に至った。
つまり偶然ではなく「まねっこ」だった。
『別々のルートを歩むとしても、離れ離れになったとしても』
あの日、殊勝な態度で「一時のさよなら」を想定したような台詞を口にしていたが、本心ではそんな気はさらさらなかった。
柚木には自由に好きなように人生の選択をしてもらいたい、それは本音であったが。
その選ばれた道にぴったり付き添う、自分達を遮る壁も隔たりも受け入れない、それが今の比良の本望だった。
「比良くんのキャンパスライフ!! 想像しただけでやばい!! 毎秒ベストショットが撮れる!!」
別格のアルファが密かに掲げる抱負にへっぽこオメガはてんで気づかない……。
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