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柚木は比良を誘って散歩へ出かけた。 行き先は彼に任せ、薄曇りに黄金色のイチョウがよく映える並木道を並んで歩いた。 (比良くんは一人で出歩くことをまだ禁止されてる) 彼の気分転換になるよう、自分が遊びにきたときはなるべく外へ連れ出すようにしていた。 「大学でもオンライン授業にしてもらうの?」 「大学では直接講義を受けたいと思ってる。合格すればの話だが」 「いやいや!? 合格するでしょ!? 比良くんが合格しなかったら他のみんな不合格まっしぐらですけど!?」 比良の大学合格を信じて疑わない柚木は、スニーカーの裏で落ち葉をカサカサと鳴らしつつ、ちょっとだけ顔を伏せた。 「……おれも死ぬ気で頑張って合格する。合格したら、比良くんが勉強に集中できるよう抑制剤(サルベーション)の代わりになる」 多くの通行人にチラ見されていた別格のアルファは。 彼らの心臓を一つ残らず容赦なく射止める罪深き笑顔を浮かべた。 「できる限り比良くんと同じ講義をとって、もしもマストくんになったときは、おれがすぐにカバーする」 それこそ正に比良が理想としていたキャンパスライフだった。 今以上に多くの時間を共に過ごし、他のアルファとの交遊を監視ならびに制限できる、壁も隔たりもない喜ばしい日々。 高校卒業と同時に番になって二人だけの絆を育んでいくとしても、それはそれ、これはこれ、であった。 「そ、その、最近のマストくんは……えーと、前みたいに性処理係を欲していないっぽいんだよね……」 「ああ」 「えーーーーとですね、別にエッチなことしなくても、一緒におしゃべりしたり遊んだりしたら、眠るようになったといいますか……」 「まるで幼児だな」 「と、とにかく! 比良くんのキャンパスライフをバックアップしますから!」 こちらから頼まずとも、自ら申し出てくれた健気な柚木に止め処ない愛情が滾々と湧き上がり、比良の心臓(ハート)はたちまち溺れた。 「ありがとう、柚木。何よりも心強い」 (死ぬ気で頑張って不合格になったらごめんにゃさい!!) へっぽこオメガは比良の不純な志望動機にやっぱり気づかない……。

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