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「おい」 柚木はびっくりした。 横断歩道で大胆不敵にゴロンしていた見知らぬ犬を抱っこし、飼い主を探そうとしていたら、いきなり後ろから肩を掴まれた。 慌てて振り返れば。 (どひゃーーーーー!?) 見知らぬ男前君が真後ろに立っていて度肝を抜かれた。 (なにこのひと、キラキラしてる!!!!) 180センチ越えの長身でスラリと長い手足、後ろ姿だけでもぱっと目を引くメンズモデル体型。 チェック柄のズボンに薄いブルーのシャツ、セーターの色は違うが柚木と同じ制服だ。 ナチュラルな上がり眉に深みのある黒曜石の瞳が凛々しい。 他を抜きん出た圧倒的オーラ、十代ながらも堂々たる佇まい、アルファであるのは一目瞭然だ。 平々凡々なルックスで傍目にはベータ、実際はベータ間に生まれ落ちたオメガの柚木はどうして呼び止められたのか戸惑い、そしてはっとした。 「もしかしてこのコの飼い主さんですか!?」 「は? 誰がそんな泥んこ犬好き好んで飼うんだ?」 予想もしていなかった返答に柚木は棒立ちになった。 呑気な犬に顔をベロベロやられながら、目の前に立つ初対面のアルファを凝視した。 (入学式に早速制服汚して、しかも遅刻するかもしれなくて、そんでもって知らないアルファに失礼なこと言われた!!) 「貸せ」 抱っこしていた犬をひょいっと奪われると慌てふためいた。 「ひぃ! 犬さらい! 何すんですかーーー!?」 泥んこ犬と揶揄した迷い犬を平然と懐に抱いたアルファは、必死の形相でしがみついてきたオメガを無視し、周囲をぐるりと見回す。 「誰かこの犬のことを知っている人はいませんか」 よく通る大きな声で辺り一帯に呼びかけた。 必死こいて迷い犬を取り返そうとしていた柚木は目を見開かせる。 それが柚木と眞栖人の出会いだった。

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