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「向かい側のコは……ベータ?」 「ぱっとしないね」 「お付きの子とかじゃ?」 「マネージャー?」 (はいはい、そーです、おれは絶世男前双子のマネージャーやってる地味系ベータです) そーいう風に見えるのもしゃーない。 服なんかアウター込みで一万円以下だし。 この二人だとアイテム一点で一万いってることもある、ウヒィ……。 「マネージャー、ケーキでも恵んでやろうか」 客の会話を取り上げて揶揄してきた眞栖人を柚木は恨みがましそうに見返した。 「アイスの方がいい!」 カーキ色のミリタリーブルゾンにグレーのパーカー、ただでさえ長い足が黒スキニーでより長く見える眞栖人は声を立てて笑う。 「すみません、アイスクリームの盛り合わせを一つ」 通りかかったスタッフに注文し、また踏ん反り返った。 ホットココアだけじゃ物足りず、アイスクリームの追加注文に柚木はホクホクしていたのだが。 「柚木」 トーンを抑えた意味深な声色で名前を呼ばれて不思議そうに比良を見た。 「不快な思いをさせてすまない」 「へっ?」 「店を変えようか」 柚木はぎょっとする。 隣に座る眞栖人は兄の発言に特に反応するでもなく、携帯を眺めていた。 「いやいや、おれは平気だから、全っ然大丈夫だから!」 「無理してないか?」 「ないないっ、無理してない! それに頼んだアイスが来るし!」 (ぶっちゃけますと) 二人といると前にもまして色々言われれるようになった。 打ってつけの比較対象といいますか。 月とスッポン、高嶺の花。 おれと二人は明らかに住む世界が違う。 相応しくないのは自分でも嫌というほどわかってる。 でも、そんなおれが、まさかさーー 「柚木は俺の番だ」 ソファから立ち上がった比良が向かい側に座る自分の真横へやってきたかと思うと、すっと跪く。 突然の紳士的振舞に柚木は呆気にとられた。 「ひ、比良くん? どどど、どーしました?」 膝に両手を添えられると電流でも流されたかのように心臓が痺れた。 「誰にも立ち入れない俺と柚木だけの絆だから」 「っ……うん」 「他人の言葉に心を搔き乱される必要、ないから」 (……むしろ、今、心を引っ掻き回されています……) 忠誠を誓う騎士の如く跪く比良に真っ直ぐに見上げられて、柚木は、益々畏まってしまうのだった。

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