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3-1-十七歳の誕生日

「今日の欠席は有原と西だな。さて、先週行われた中間テストの答案が順次返ってきていると思うが……」 朝のホームルームが済み、一限目が始まるまでの間、授業の準備をしていた柚木のそばへ眞栖人がやってきた。 「お誕生日おめでとうございます、柚木歩詩サマ」 今日で十七歳になるオメガ男子は、隣の教室からやってきたアルファ男子の祝福に照れ笑いを浮かべる。 「ご丁寧にどうも、です」 「尚、今回、プレゼントは用意しておりません」 「え!? なんで!! ケチ!!」 隣の空席に浅く腰掛けた眞栖人は堂々と非難してきた柚木の額を人差し指で弾いた。 「痛いっ」 「だって、お前。去年に俺がやったラッコ、一度もどこにもつけてないだろうが」 「あっ……あれ、ガラスのラッコが色んなトコにガンガン当たって壊れそうで怖いんです!」 「フン」 ブルーのシャツにネイビーのセーターを重ね着した彼はそっぽを向いた。 飴色のラッコは柚木家の長男部屋の勉強デスク引き出しに住んでいる。 長女からもらったお菓子の空き箱なる寝床でスヤスヤ眠っていた。 「眞栖人クン、昨日よりも足長くなった?」 「日に日に男前度が増してる……」 二年になってクラスが変わり、休み時間や昼休みになると柚木の元へ足繁くやってくるアルファに他の生徒は毎度のことながら色めき立っている。 朝一にして同級生や見ず知らずの先輩・後輩にもらったお菓子の小袋でチェック柄ズボンのポケットを両方膨らませた眞栖人は柚木に尋ねた。 「今日は柊一朗と放課後デートか」 「え? ううん? だって比良くんは部活始まったじゃん?」 「あー……」 「眞栖人君、おはよう。それから数Bとコミュ英で学年トップおめでとう」 柚木のクラスメートであるアルファの女子が話しかけてきた。 前年度は同じクラスでもあった彼女に眞栖人は「どーも」と気のない返事をする。 シャープペンシルの残りの芯をチェックしていた柚木は、不意に彼女が眞栖人に必要以上に身を寄せたので、どきっとした。

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