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4-1-誕生日の次の日、学校にて
昼休み、賑やかな教室の片隅で柚木は母親お手製のお弁当に手をつけようとせず、しばし放心していた。
「あれ、ユズくん、今日ぼっち飯?」
「眞栖人クンにとうとう愛想つかされた?」
精神が幼稚園児レベルの柚木ならば「うるさいっ」「なんだよっ」と言い返してくると思ったベータのクラスメート。
まさか無言でこっくり頷かれるとは思わず、只事ではないと急いで机へ駆け寄った。
「いっしょ食べるか!」
「うわ、お弁当にステーキ入ってるじゃん、めっちゃ豪華!」
柚木は久し振りに眞栖人以外の同級生とお昼ごはんを食べた。
昨夜、食べ切れなかったステーキをモグモグしつつ、今日一度も会っていない友達のことを思った。
(いつもなら眞栖人くんがコッチの教室に来て一緒に昼ごはんを食べる)
それに朝か休み時間に一回は顔を見せてくれるのに。
教室違うし、廊下ですれ違ったわけじゃないけど。
学校に来てるのは気配で何となくわかる。
(昨日の帰り、おれのせいで比良くんに手をパチンされて、ショックだったとか)
……いや、おれじゃあるまいし。
……そんなことで眞栖人くんがショック受けるわけないか。
(じゃあ、なんでだろ)
いつもなら昼休みを共に過ごす友達が一向に姿を現さない。
些細な異変に柚木はモヤモヤする。
放課後や週末に会わなくなった眞栖人と、これ以上、距離ができるのは嫌だと思った。
「ちょっと隣の教室行ってくる」
早めにお弁当を食べ終えた柚木は一分程うじうじした末に彼の様子を見に行くことにした。
(もしかしたら食堂行ってるかもだけど)
が、しかし。
柚木の予想に反して眞栖人は隣の教室にいた。
教卓近くの前方でアルファ性のクラスメートに囲まれてランチの真っ最中だった。
(めっちゃ普通にいる!!)
柚木のクラスと同様、こちらも生徒の半数ほどが教室で昼休みを過ごしていた。
少数のオメガはそれぞれ単独で食事していたり、読書していたり。
過半数を占めるベータは複数のグループをつくって思い思いにお喋りしているものの、アルファの集団をチラチラと気にしているようだった。
(比良くん、自分のクラスはアルファだけって言ってたなぁ)
私立に通う比良はアルファオンリーの優等生クラスに在籍しており、オメガ性の生徒がぐんと少ないと柚木は聞いていた。
「眞栖人クンが食べてるベーグルサンド、おいしそう」
「どこのお店?」
「なぁ、中間も終わったことだし、今度の週末くらいに近場のホテルで一泊パーティーして遊んだりしない?」
双子の兄と同様、何かと輪の中心に据えられる眞栖人。
同じアルファ層でも羨望や憧憬の念が割合を占めている兄と違い、破天荒な言動は目立つが砕けた性格で親しみやすい弟は多くのアルファと親交があった。
(ホテルで一泊パーティーして遊んだり……?)
教室後方、ドアの隙間から眞栖人の様子をこっそり窺っていた柚木、聞き捨てならない会話に胸をざわつかせた。
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