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いや、惹きつけられるというよりも。 心臓ごと支配されるというか。 「おいで」 今度は比良が棒立ちになっていた柚木の腕をとり、(いざな)った。 無人の教室へ。 扉を閉め、入ってすぐの角に身を寄せると、思考が追い着かずにされるがままだったオメガ男子を正面から抱きしめた。 「柚木……」 耳を掠めていった熱いため息。 比良の両腕の中で柚木は瞠目した。 遅れていた反応がやっと出始める。 両頬が西日よりも濃く色づいて鼓動は著しく加速した。 予期せぬ逢瀬にざわついていた胸の内側がより一層騒がしくなった。 「……比良くん……」 優しく頭を撫でられ、いとおしげに髪を梳かれて。 昼休みに頭をぐしゃぐしゃにしていった眞栖人の無造作な手つきが独りでに肌身に蘇り、息が止まりそうになった。 「キスしたい」 覗き込まれるのと同時に強請られて柚木は力一杯首を左右に振った。 「ここ、学校だから、むりだから」 「柚木」 「っ、だめ、だめだよ、比良くん、お願いだから」 「……」 「っ……っ……っ……!!」 比良は嫌がる柚木の唇を奪った。 運命のオメガへの愛情に溺れるがまま口づけた。 開け放たれたカーテン。 どこからか聞こえてくる生徒の笑い声。 片付けられた机の上はセピア色に彩られ、朧げに伸びた影が床に滲む。 「ん……!」 奥まで及ぶ濃厚なキスに柚木は呻吟した。 「ふ……っ……っ……っ」 頻りに鳴らされる水音。 角度が変わる度に新たに深々と求められる。 口内で生じる舌と舌の摩擦に込み上げてくる陶酔感。 後ろへ逃げがちな腰までしっかり抱き寄せられて、捕らわれて。 敏感化していく唇を満遍なく堪能された。 「んっ、ぅ、っ、ん、ン……!?」 キスされながら体の線をなぞられて柚木はビクリと震えた。 背中や腰をゆっくりと辿る大きな掌に我が身が熱せられていく。 慎ましげなラインを描くお尻を撫でられた際には、衝撃の余り、涙が湧き上がった。 (どうしよう) 制服の内側に潜り込んできた手が背中に直に触れると、比良と壁の間で細身の肢体は明らかに強張った。 「……柚木、ずっと目を閉じてる」 息継ぎの僅かな間にアルファは問う。 「俺のこと見てくれないのか……?」

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