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「お前らは勝手にお泊まりしてろ。冬休み、俺はパーティーで忙しい」
「そ、それって阿弥坂さんの? ●日のやつ?」
「さぁ、どうだろな、他にも誘われたかもな」
「三人一緒にトランプしたり枕投げしたりしよーよ!」
「幼稚園児のお遊戯に付き合えるか」
「ッ……口の中にナゲット詰め込んでやる~~!」
「ご予約のお客様でしょうか? ご招待のお客様でしたら招待状を提示していただけますか?」
お泊まり用の荷物で重たいリュックを背負った柚木はレストランの出入り口でさっと赤面した。
冬休みに突入し、約束していた●日に比良家へ伺ってみれば眞栖人は本当に不在であり、出迎えてくれた比良に「探してくる!」と、荷物を置いていけばいいものを、うっかりそのまま持ってきたへっぽこオメガ。
(比良くんと二人きりのお泊まりなんておれには早い、早すぎる!)
比良が眞栖人のフリをして学校を訪れて以降、柚木はそういう兆しに一際敏感になっていた。
とにかく二人っきりになるのを避けた。
番の片割れに警戒心を持つようになってしまった。
(ごめんなさい、でもこればっかりは……!)
胸の内で謝りながら清く正しい交際をゴリ押し、キス一つでも兆しを察すると挙動不審になってイタイ奇行を繰り返し、あからさまに回避した。
オメガの本能に流されて自分が自分じゃなくなるのが怖くて。
やむをえずに運命のアルファを拒んだ。
(これで嫌われたら元も子もない)
柚木の不安を余所に比良は以前と変わらない誠実な態度をとり続けた。
番の片割れの未熟さや迷いを受け入れ、優しく穏やかに接しているように見えた……。
(こんなのワガママでしかない)
自分から避けておきながら嫌われたくないなんて矛盾してる。
おれは真性ドへっぽこだ……。
「あの、お客様?」
柚木ははっとした。
取り留めのない悩みに思考を掬われて惚けていた真性ドへっぽこオメガは、怪訝そうにしているレストランのスタッフにさらに赤面した。
「あ、あの、人を探していて……」
「はい? 何でしょう?」
小声で聞き取れなかったスタッフに聞き返され、後から来た予約客と思しき若い男女にクスクス笑われて、柚木は限界までド赤面した。
そこへ。
「歩詩クン? 来てくれたの?」
阿弥坂が現れた。
店の奥から足早にやってくると、オーナーの娘の登場に畏まっているベータ性のスタッフに「この子は私の友人なの」と言い、茹蛸並みに赤くなっている柚木の手をとった。
「来てくれてありがとう。案内するわ」
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