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「私にわかりやすく教えてくれる?」 口元にソースをくっつけた柚木は、目許が引き締まったアーモンドアイの迫力ある眼光についつい平伏しそうになった。 (これが女王サマの眼力……!!) 「ま、眞栖人くんは時々破天荒で、ドラゴンみたいにしょっちゅう毒吐く生き物で」 「完全に悪者ね。私が退治してあげましょうか」 「ひぃ……退治しないで……」 艶やかな唇で三日月を象って笑う阿弥坂に柚木はしどろもどろに続ける。 「でも、いざっていうとき頼りになるし、一緒にいて居心地いいし、安心するっていうか、なんかポカポカあったかい」 「彼に抱かれたの?」 柚木は二度目の「ブフォ」をした。 「ううう……ごめんなさい……」 紙ナプキンでテーブルを拭いてやっている阿弥坂に「そんな関係じゃないよ、眞栖人くんとは」と弱々しげに伝えた。 「そう?」 半分開かれた帳の向こうで煌めくシャンデリア。 ひと時の祝宴を愉しむ人々の昂揚したざわめきが空気を震わせる。 「貴方と眞栖人君は本当にただの友達同士?」 口元まで丁寧に拭われて恐縮し、連続する直球の質問に辟易している柚木の顎を掬い上げ、阿弥坂は問うた。 「歩詩クンが本当に好きなアルファはどこの誰?」 (おれが好きなアルファ?) それは比良くんだ。 だって番だから。 運命で結ばれてる……らしいから。 じゃあ、もしも、番じゃなかったら? ただのへっぽこオメガと別格のアルファ、運命に約束されていない関係だったら? (比良くんは他のオメガを選ぶに決まってる) おれは誰を選ぶ? 誰を好きになる? 「…………」 顎クイされたままフリーズしている柚木に阿弥坂は人知れず悦に入るように笑みを浮かべた。 捕食対象と見做されているのに無防備極まりないへっぽこオメガ。 アルファの女王サマは食指に動かされるがままつまみ食いしようとーー…… 「マズイからやめとけよ」 突然、半開きだったカーテンが不躾に大胆に開かれた。 「女王サマの寛容な腹が後で食あたりでも起こしたら一大事だろ」 ボックス席に自ら現れた眞栖人に柚木はポカンとする。 一方、無作法な登場に驚くでも不機嫌になるでもない阿弥坂は、本日のゲストの中でも存在感際立つアルファを悠然と出迎えた。 「そう言う自分はもうとっくに味を占めてるんじゃないの?」 女王サマの了解もとらずに半個室に上がり込んできた眞栖人は柚木の隣に堂々と腰かけた。 「俺は悪食だから平気なんだよ」

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