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6-12
「風邪……引くと思った……薄着……だめ」
「……」
「だから……この布団、貸そうかなって……」
「お前、そこまで支離滅裂だったか?」
(ああ、やっぱりあったかい)
ポカポカして、きもちいい。
眞栖人くんに抱かれたら、もっとあったかくなるのかな。
(………………)
服越しの温もりに夢中になっていた柚木は、ぎこちなく離れた。
ずれ落ちかけていた布団をかぶり直し、前を重ね合わせ、おずおずと頭上を仰ぐ。
「阿弥坂さんに会いにいくの?」
兄の部屋では殺気立っていたはずの眞栖人の双眸が大きく見張られた。
「どういう意図があっての質問だよ、それは」
「意図って、その、えーと」
「阿弥坂はお前に気があるんだぞ」
今度は柚木の奥二重まなこが真ん丸に見開かれた。
鈍感にも程があるへっぽこオメガと向かい合った別格のアルファはほとほと呆れ返る。
「だって、二人、お互い気があるようにしか見えなかった」
「俺とあいつの間にあるとしたら敵意だ」
「ひょぇぇ……」
「だから長居してほしくなかったんだよ、女王サマのテリトリーに」
(敵意ってことは、二人、嫌い合ってるの? なんでだろ……?)
「それにあの店でオメガはお前一人だけだった」
「おれのこと心配してくれたの?」
「終始ベータ扱いで取り越し苦労だったろうけどな」
「好きだよ」
なんともはや、斬新なタイミングで柚木は告白した。
「眞栖人くんのこと好きなんだ」
泣き疲れた目で一心に見上げられて眞栖人は言う。
「柊一朗より俺がいい、そんなわけない、さっきそう打ち消さなかったか」
先程、咄嗟に否定の言葉を口にしていた柚木は返事に窮した。
詰め寄るような厳しい口調ではなく、普段と同じ声色と眼差しでいる彼に少しだけほっとする。
(おれにも、二人にも、うそつきたくない)
「眞栖人くんは阿弥坂さんと両想いだって思ってたから、おれの気持ち伝えたところで拒否られて惨めになるだけだから……誤魔化した……です」
「女王サマと両想いか。とんでもない思い違いだな」
「だけど我慢できなくなった、です」
磨かれたフローリングに裸足で立つ柚木は。
置き去りにされたくないこどもみたいに眞栖人のジャケットを片手で握り締めた。
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