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(このまま溶けてもいい) アルファの抱擁に嬉々として溺れたオメガ。 居心地のいい懐で何もかも忘れて、かけがえのない温もりを無邪気に貪った。 「あったかい」 「いや、どう考えても寒いだろ」 「ううん。ここ、ポカポカしてて、きもちいい」 柚木のご満悦な様子に眞栖人も満たされる。 心音でも聞くように胸に片頬をくっつけて目を瞑っている無防備な姿に幸福感がカンストする……。 「ぶしゅん!!」 懐で豪快にクシャミをかましたオメガに別格のアルファは苦笑した。 「やっぱり寒いんだろ」 「うう……」 「このまま風呂入るか、一緒に」 真っ白でさらさらした肌触りの羽毛布団をかけ直されたかと思えば、ひょいっと抱き上げられる。 紛れもないお姫様抱っこに柚木は「ひょえええっ」と色気のない奇声を上げた。 「着替えあるんだろ。俺の服貸してもいいけどブカブカだしな」 「いやいや、待って待って、一緒に入らないし!? 急にお姫様抱っこされても大変恥ずかしーんですが!」 「裸足でフローリング歩かれると見てるこっちまで寒くなるんだよ」 「な、なんだそれ、遠回しにスパダリ感出すのやめっ……ぶしゅん!!」 「お前、俺の服目掛けて堂々とクシャミしてるよな」 「眞栖人」 眞栖人の懐でぎゃーすかしていた柚木は、はたと口を閉ざした。 廊下の奥からやってきた比良に反射的に胸の奥の奥を引き攣らせた。 「柚木が怪我したら危ない。今すぐに下ろすんだ」 二人のすぐそばまでやってきた比良は、焦燥している柚木を挟んで、同じ顔をした弟を咎める。 「俺の片割れに気安く触らないでくれ」 毅然とした態度の兄の命令に従うどころか、一人おろおろしているへっぽこオメガを抱き直し、眞栖人は低く笑う。 「番だからって自分の所有物扱いか? モラハラ旦那まっしぐらかよ」 別格のアルファである双子の兄と弟は黒曜石の瞳をやたら鋭く研ぎ澄ませて対峙した。 「俺と柚木は絶対的な繋がりで結ばれている。誰一人、入り込む余地はない。同じ顔をした双子の弟だろうと」 「番だからって何してもいいのか。嘘をついて、こいつの優しさを踏み躙って、裏切って、好き勝手に抱いていいのか」 「部外者にとやかく言われることじゃない」 「さすが高潔で誠実な柊一朗お兄サマ、悪いことをした自覚がない、その分、余計に性質(たち)が悪い」 血で血を洗う双子喧嘩でもおっ始めそうな一触即発ムードに柚木は顔面蒼白になる。 「早く柚木を返すんだ、眞栖人」 「奪い返してみろよ、柊一朗」 (ひょぇぇぇぇえ!!!!)

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