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ものものしげに対峙する二人を慌ただしげに交互に見、これまでに見た覚えのない激おこっぷりに柚木は限界まで眉根を寄せた。 「二人ともケンカしないで」 比良と眞栖人は揃って最愛なるオメガを見た。 何としてでも双子喧嘩を回避したい柚木はちょっとばっかし強気に出る。 「ケンカするなら帰る」 (これで帰れ帰れって言われたら元も子もないですが) 「帰らないでくれ、柚木」 「今日は泊まっていくんだろ」 柚木はこっそり一安心した。 別格のアルファ双子が二人しておさまっている視界に妙にどぎまぎしつつ「選べないんだ、おれ」と素直に打ち明けた。 「二人のことが同じくらい好きで。もしも二人が溺れて、どっちかを選べって迫られたら、おれも一緒に溺れる」 「柚木が一緒なら俺は溺れ死ぬのも怖くない」 「も、もしもの話だから、比良くん」 「俺のせいでお前がそんな目に遭うなんて、俺は死んでも死に切れない、見殺しにされた方がまだマシだから絶対にやめろ」 「だから……もしも……」 「お前も肯定するな、柊一朗、その言い草だと道連れにしたいって言ってるのと変わらないぞ」 「部外者の弟に指図される筋合いはない」 「俺より数分先に生まれたからって兄貴ヅラしやがって」 「たった数分の差で柚木と番になる運命から外されて残念だったな」 「やっ……やめやめ! やめーーーーっっ!」 なんだかんだで、大人しくお姫様抱っこされ続けている柚木は双子喧嘩を始めさせまいと躍起になる。 へっぽこオメガなりに頭をはたらかせて和睦の道を切り開こうとした。 「あのですね!? 三人一緒がいいってこと!! それが一番いい!!」 次の悪口を互いに投げつけようとしていた比良と眞栖人はピタリと静止した。 次に布団に包まる柚木の顔をまじまじと覗き込んだ。 「三人一緒に?」 「欲張りなオメガだな」 意表を突かれたような二人の反応に提案した張本人の柚木はきょとんとする。 へっぽこオメガが己の失言に気づくのは程なくしてから……だ。

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