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「ぅン、ぅ、ぅぅ、ぅっ」 「噛めよ、ほら」 「やんっ……ぐるぐる、すんな、ぁ……っ」 「ほら」 「ああんっ……ちょっ……らめ……っ」 細腰を掴んでぐーるぐーるする両手を上から掴み、頬を生き生きと上気させた柚木は涙目の膨れっ面で眞栖人を睨む。 「お前に所有されたっていう証がほしい」 本来ならば。 アルファがオメガの聖域に痕を残す。 所有の証を刻み込んで正式に番を成す。 「お……おれが眞栖人くんを所有……?」 冗談を言っているのかと、ぐーるぐーるな過激プレイにお(かんむり)でいる柚木に眞栖人は頷いてみせた。 「消えたらまたつけろ」 「……噛んだりしたら、眞栖人くん、痛いじゃん」 「お前の歯や爪なんか仔犬程度だ」 「……せめて成犬って言え」 「まだ乳歯だろ」 「ッ……ぅぅぅぅ……!」 涙ながらにプンスカしている柚木に対して眞栖人はずっと片笑みを湛えていた。 夢にまで見た温もりを全身で痛感し、ひと時の繋がりに酔い痴れて、込み上げてくる感情に頬の緩みを止められずにいた。 「夢じゃなかった証拠にもなる」 柚木は、心臓を一口齧られたような気がした。 眞栖人が抱いている自分への想いが重なった場所から流れ込んできて胸の奥がぱっと爆ぜた。 噛みついたり、爪を立てたりする代わりに。 自分から彼にキスをした。 (夢じゃないよ、眞栖人くん) そんな想いを込めて唇を捧げた。

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