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7-14
ただ重なっただけの微熱同士。
柚木と同じく眞栖人も目を瞑る。
夜通し渇望したこともあったオメガの唇に心も体も傾けた。
「……よいしょっと……」
照れ隠しにもごもご呟いて柚木が顔を離せば、数秒間の短さでどこか眩しそうに目を開け、すぐそばにある奥二重まなこに告げた。
「俺まで蝶々になりそうだった」
「眞栖人くんも、ふわふわ、した……?」
「ああ」
夜気にしんなりした前髪のかかる黒曜石の瞳で眞栖人は強請る。
「もっと」
(あ、また、かぢられた)
心臓 を一口ずつ齧られて麻痺した羞恥心。
柚木は頼り甲斐のある肩に両腕を回し、さらに身を寄せ、眞栖人に口づけた。
自然と開かれた互いの唇。
二人の舌先がゆっくりと結びつく。
「……ふ……」
吐息を溢れさせて、もう、夢中になる。
髪を撫で、梳いて、甘やかし合う。
時に薄目がちに視線も繋げて想いを花開かせていく。
「ん……ン……」
抱きしめられ、胸と胸が濃密に触れ合い、それまで休息していたペニスで柚木は蜜穴奥を貫かれた。
「っ……ぁ……眞栖人くん……っ……ん、む……っ」
ほんの束の間の息継ぎを挟み、違う角度から深々とキスされて口内を温められる。
柚木も眞栖人をぎゅっと抱きしめた。
隔たりなく密着して生まれる熱が心地よく、いつまでも浸っていたくて、別格のアルファにその身を委ねきった。
「柚木……好きだ……」
眞栖人はキスの合間に吐息まじりに想いの丈を注ぎ込んだ。
呑み干しきれずに、あっぷあっぷしそうになっているオメガを抱き直し、自らも揺らめいて交わりを深める。
「お前に支配されて幸せだ」
柚木は、やっぱり我慢できなくなった。
雄々しさの匂い立つ首筋に顔を埋め、所有の痕を刻むように唇で縋った。
「ガチで仔犬だな……なぁ、もっと深く……」
「んんッ……だから……好きで噛んでなぃ……」
(あったかい、きもちいい、もっとほしい)
……蝶々の次はガチの仔犬になった気分だ。
……ぜーんぶ根こそぎ忘れて甘えたくなる。
「おれも……好き……好きだよ、眞栖人くん……」
柚木は眞栖人に頬擦りした。
怒涛の愛欲に漲るアルファに力一杯しがみついた。
「お前が溺れたら死ぬ気で助けて俺も生き残る」
まだ<もしもの話>を引き摺っている眞栖人に柚木は思わず笑って、誓いのキスを。
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