314 / 333
1-3
【比良くんと柚木】
「えぇぇぇえ」
ゴールデンウィーク中、部活帰りのはずが、比良が待ち合わせ場所に私服姿でやってきた時点で不思議がっていた柚木だが。
連れて行かれた先に度肝を抜かれた。
ラブホだ。
紛うことなき、わかりやすいラブホテルだった。
「ど、どしたの、比良くん、ほんとにどしたの?」
「柚木と来てみたかったんだ」
ショルダータイプのスポーツバッグを肩からかけ、マウンテンパーカーにジョガーパンツというスポカジコーデが様になっている比良は、ラブホ街の一角で凍りつく柚木に笑いかけた。
(どこに行くのか秘密って言われて、おれ、てっきりドッグカフェだと思ってたのに!!)
「行こう」
「ッ、今ゴールデンウィーク真っ只中だし!? 空いてる部屋ないかも!!」
ところがどっこい、幸か不幸か、奇跡的に一室空いていた。
「……比良くん……」
まさかの壁も天井も寝具もピンクだらけのぶりっぶりな部屋に入室した瞬間、柚木は、比良に抱きしめられた。
(あったかいっていうより、比良くん、熱い)
「今日も家に眞栖人がいるから柚木を連れて帰りたくなかった」
運命の番であるアルファの懐で柚木はパチパチ瞬きした。
「そんなこと言わないで、比良くん。双子の弟なのに」
「柚木は三人でシたかったのか?」
「ちっ、ちちちちっ、違う違う、なんでそうなるかな」
抱擁が弱まり、柚木がもぞもぞ顔を上げれば、比良は照れくさそうに笑う。
「ごめん。部活帰りで汗くさいだろ」
比良はシャワーを浴びに浴室へ向かった。
残された柚木は、初訪問であるラブホの部屋に興味がないわけもなく、ドレッシーな室内をキョロキョロ見回した。
『こういう場所に来るのは初めてだ』
柚木はベッドにちょこんと腰かけた。
だが、すぐに落ち着きなく立ち上がった。
似非アンティークじみたド派手なソファにきちんと畳んで置かれていたパーカーを手に取る。
「あったかい」
(汗くさいとか言ってたけど、別に、全然……)
不審者さながらに念入りに無人の部屋を見回した後、柚木は、パーカーに顔を埋めた。
(比良くんの匂いがするだけ)
愛犬の大豆さながらにクンクンする。
病みつきになる比良の匂いに頬を紅潮させた。
「柚木、巣作りでもするのか?」
顔を上げれば、あっという間にシャワーを終えた、ボクサーパンツ一丁で髪を濡らした比良がそばに立っていた。
「本当に可愛いな、俺の柚木は」
クンクンしていたところを目撃されて、穴があったら入りたい状態の柚木は、穴ではなくベッドへ持ち運ばれた。
「俺の匂い、好きなのか……?」
指と舌で念入りに解された蜜穴に潜り込んだアルファのペニス。
横長の大きな枕に後頭部を預けた全裸の柚木は、同じく全裸、なおかつ水も滴るいい男状態の比良に愛しげに見つめられて、咄嗟にそっぽを向いた。
恥ずかしがって答えてくれない最愛なるオメガに比良は笑みを深める。
生温く潤う蜜壺に沈め切ったペニスで、グリ、グリ、最奥をピンポイントで小突いた。
「あんっっ……そ、それやめて、比良く……」
「柚木は、俺の匂い、好き?」
「んんっっ……す……好き……かな……」
「……」
「ああんっっっ……す、好きっ、比良くんの匂い好きぃ……っ」
連続グリグリ攻めに耐えきれず、柚木は甘い悲鳴にも似たアンサーを返した。
前髪の先から雫を滴らせて比良は西日色に頬を染める。
雫を受け止めて濡れたオメガの頬に口づけ、唇にもキスを落とし、とろんとした奥二重まなこに飽きずに問いかけた。
「俺のこと、好き……?」
柚木は……こっくり頷いた。
ともだちにシェアしよう!