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Chapter 7―2
武智が自販機に小銭を投入していると、総務課の堀川に呼び止められた。改まった様子で何の話かと思ったが、どうやらデートのお誘いらしい。
「ゴハン、一緒できませんか?」
小動物じみた動きで、堀川がコテンと小首を傾げる。わが社の独身男性からナンバーワンの支持率を勝ち取っている堀川だ。
しかし、遊んでいる場合ではない武智からすれば面倒でしかない。
―――当たり障りなく、
2度目がないように断るには。
そう考えを巡らすと同時に、武智の顔に思わず苦笑いが浮かんだ。
―――ああ、なんだ。オレもか。オレも面倒だと思われたのかもしれない。
武智の勢い任せの告白は、ヒカルに笑って流された。強い拒絶は感じられない代わりに、歓迎されている訳でもないという印象を受けた。
だから、焦らず待とうと思ったのだが、あれから既に10日が経つ。
連絡が欲しい―――と、念を押したにも関わらず、ヒカルから音沙汰はない。これは、やはりフラれたと考える方が正解だろう。
フラれたならば、ヒカルとの関係はこれまでという事になる。
―――それならそれで良かった、、、はずなんだが。
どうも上手く割り切る事が出来ずに、武智はモヤモヤしたものを胸の内に抱えていた。
「村上さん?」
「いいですよ。総務課の皆さんはいつがいいですか?」
「えっと、」
「あ、山形部長にも声かけないと。あの人、仲間外れにされたらきっと不貞腐れますよ。」
武智が惚けたフリをすると、堀川は諦めたように笑った。
―――察しが良い。
武智の方はというと、週末にヒカルの店へ行ってみようか―――などと、察しの悪い事を考えていたりする。
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