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Chapter 7―3
『キハラホーム 東支店』は歓楽街のど真ん中にあった。一階は普通に小さな支店のひとつだが、二階以上は喜原組の事務所になっている。
あのビルの最上階に会長―――、いや、組長の部屋があり、最終的にはあそこまで武智が攻略せねばならないかもしれない。
―――ボロいんだがな。
古びたビルのように見えるが、かなり厳重にセキュリティを施されており、入り込むのは至難の技だろう。再び不満が首をもたげそうになる。
武智が見上げていた首を戻すと、5メートルほど先に思わぬ人物がおり、ギクリと固まった。
「社、長。」
―――喜原勝基。
車から降りてきた所らしく、社長の真後ろにエンジンのかかったままの真っ黒なベンツが止まっている。冷徹な瞳に射ぬかれて武智が身動きできずにいると、ベンツからもう一人男が降りてきた。
深いワインレッドの派手なスーツに身を包んだ彼に視線が吸い寄せられる。
カッ―――と、胸の内が、何故か、焦げるように熱くなる。
なんだこれは。
この反応はおかしい。こんな反応をする筈がない。苦しいほどの胸の熱さに混乱する。
グルグルと無様に回る頭で何とか理解しよとしたが、行き当たった事実に、また更に武智は混乱した。
もしや、嬉しいのか彼に会えた事が。
―――馬鹿な。
社長に続いて、彼―――椿山ヒカルも車から降りるとすぐに武智の存在に気付いた。
激しく動揺している武智と目が合うと、何故か少しだけ呆れたような顔をする。
己はよほど変な顔をしているらしい。
武智が我に返り慌てて頭を下げると、社長は表情を緩める事なく片手を上げて挨拶を返し、ひとり古いビルの中へ消えていった。
後から思えば、滅多にないチャンスだったかもしれないが、この時の武智の頭はショートしており―――。
ベンツが立ち去り、ヒカルがこちらへ歩いて来るのを、断罪される者のような心境でただ見ていた。
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