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Chapter 8―3

巨大な海洋生物の作り物を唖然と見上げて、武智は足を止めた。この不思議なオブジェはマグロのつもりなのだろうか。 「ちょっと、入らないの?あなたが寿司がいいって言ったんでしょ。」 先に歩いていた由佳里が振り返りながら言う。 前回ほど着飾っている訳ではないが、今日もまたフワッとしたワンピースを身に付け、由佳里は女性らしい姿に扮していた。 それにも関わらず、不機嫌そうに眉間にシワを寄せて威圧感を放っているものだから、色々と台無しである。 そんな由佳里に苦笑いを返して、武智も店内に足を踏み入れた。 いらっしゃいませ~―――と、店員から元気な声がかかる。 「いやぁ、回らないお寿司が良かったなぁと。」 「贅沢言わないの。経費なんかほとんど出ないんだから。知ってるでしょ。」 「知ってますが―――。あれ?じゃあ、前回のディナーは、」 由佳里が空いているボックス席に腰を下ろしたので、武智はその向かいに座った。 「あれは私の奢りよ。」 「え、そうだったんですか。」 年上の上司とは云え、女性に奢ってもらったのはもしかすると初めてかもしれない。途端に気まずいような気持ちになる。 「ごちそうさまでした。じゃあ、ここはオレが出します。」 「バカね。あなたに出してもらうほど、安月給じゃないわ。―――で、どうだったの?」 由佳里は男前に言い放ち、早く本題に入れと促してくる。武智はまた苦笑いしてから、緩めた頬を戻した。 まあ、話す事はほとんど無い訳で、張り合いの無い事であるのだが。

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