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Chapter 10―3

「村上、ちょっといいか?」 村上武智がパソコンを弄っていると、部長の山形に声をかけられた。珍しく真剣な雰囲気を漂わせており、何の用事かピンと来る。 ―――本当だったのか。 嘘であれば良かったとは思わないが、後戻りをできない状況にぐっと胃が重くなる。 誰もいない小会議室へ入ると、すぐに山形が懐から紙を差し出してきた。 「社長からだ。」 「チケットですか?」 不自然にならぬよう気を付けながら、差し出された紙を受け取る。 その紙は船の乗船予約券だった。そこに書いてある日時は、明後日の19時30分。 全てがヒカルに聞いていた通りで、未来を予言された気分になり少しゾッとした。 「その日に、船上パーティーがあるらしい。恐らく、会長の祝いだと思うが、詳しくは知らん。おまえが呼ばれた理由も聞いてないし、見当もつかんが、必ず出席しろ。クビ切られたくなければ、這ってでも行け。」 「分かりました。」 大袈裟な話ではないのだろうが、山形が話すとコントを見ている気分になる。 「あ、そうだ。パートナーは最悪いなくてもいいだろうが、連れて行くなら、口が固い女にしろ。いるか?紹介もできるが。」 「あ~、自分で探してみます。見付からなかったら、ひとりで行きますし、大丈夫です。」 「それと。この事、他の奴には言うなよ。」 山形が真剣な顔で釘を指してくる。 それに武智が神妙に頷くと、山形は満足そうに笑ってから踵を返した。 ひとりになった室内で、再度チケットに視線を落とす。武智が呼ばれたのは、ヒカルが手回ししたからだ。いったいどんな手段を講じたのか、武智には想像がつかない。 ―――いったい何があるのだろうか。 何も聞かされていないが、ただの誕生日パーティーではない事は確かだ。

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