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Chapter 11―2

〈H side〉 デッキに現れた恋人のような二人を観察しながら、椿山ヒカルはゆるりと微笑んだ。 ―――ゴージャスな女を連れてるな。 村上武智はいつもより着飾って色男という感じではあったが、彼の腕に手を添えて並んでる女の方がインパクトが強い。 彫りの深い顔立ちと、筋肉の発達した体つきに、南米辺りの血を感じた。 「はじめまして、中園と申します。」 突っ立ったまま返事もしない村上に焦れたのか、女が自ら自己紹介をし始める。中園と名乗った派手な女に、ヒカルはふわりと笑みを返した。 「村上さんにはご贔屓にして頂いております。バーの店長で、椿山ヒカルといいます。」 「バーの?」 中園が少し驚いたように目を瞬かせる。 バーの店長など珍しくもないだろうに。何を驚いたのか不思議に思いながらも、ヒカルは店のカードを取り出した。 「ええ、よろしければいらしてください。」 ヒカルがカードを差し出すと、中園は受け取りながら、村上へチラと視線を送る。一連の流れを見て、ピンときた。 ―――こいつ、話したな。 ヒカルの名前は何故か言っていなかったようだが、恐らくバーの店長が社長の愛人であり、村上と肉体関係を持っている―――くらいの事は話したのだろう。 そこまで話したと云うことは、中園は村上の組織の人間か。 ―――なんだ。じゃあ、恋人ではないのか。 ガッカリしたような、安堵したような気分になり、ヒカルは内心で苦い顔になった。

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