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Chapter 13―1
早朝5時30分の時計を見上げて、村上武智は欠伸を噛み締めた。
『それ、どこから?』
朝一番で由佳里に電話をかけて、麻薬取引の話を報告した所だ。武智が返答に詰まると、由佳里が再度問いを口にする。
『誰から得た情報?』
「あ~、確かな情報なんですが、言わないとダメですかね。」
『分かってるでしょ。』
「喜原社長です。兄の勝基。」
本当なら椿山ヒカルの名前は出さねばならないのだろうが、やはりまた打ち明ける事はできなかった。
喜原勝基の名を告げると、由佳里の声がワントーン上がる。
『喜原勝基!?あなた、いつの間に、懐に飛び込んでたの?』
「色々ありまして、協力関係になっています。」
『スゴいじゃないの。良くやったわ。―――それで、兄の狙いは、麻薬取引の阻止だけ?それとも、本格的に組を潰すつもりなの?』
「いえ。社長としては組の存続はそのままに、弟だけ失脚させる意向です。」
勝基は元々、ヤクザ家業へ積極的に荷担するつもりもないが、必要悪だという考えだ。確かに喜原組が倒れればパワーバランスは傾き、この地区の平和は崩れてしまうだろう。
それは、武智の組織も望むものではない。
「最近の弟の行動には眉をひそめる事が頻繁になっていて、今回、薬物に手を出そうとしてると知って、見切りをつけた感じですね。」
『喜原組は薬物NGだものね。』
「はい。」
『兄は、組長の座を?』
「いえ、違うと。あ、いや、ハッキリとは言わなかったのですが、恐らく組長の座に興味はないと。」
『ふぅん。』
弟の遼基が下手に対抗心を燃やして、馬鹿な真似さえしなければ、勝基に手出しする気はなかった筈だ。
『こちらにも入っている情報があるから、上と相談してまた連絡するわ。あなたはそのまま社長側に付いて。いい?』
わかりました―――と、武智が答えると、由佳里との通話は切れた。
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