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Chapter 14―2

いつの事だったか忘れてしまったが、ヒカルと家族の話になった事があった。 「親はいないよ。施設育ち。」 ベッドの上でゴロゴロと寝そべりながら、全裸のヒカルが答える。まるで、なつかない猫が甘えているようで可愛らしく思えた。 「村上さんは?親とか、兄弟とか。」 「親は健在で、妹がいます。」 武智は考えもせず、気付いたら本当の事を話していた。まずかったかとも思ったが、妹くらいで身許がバレたりはしないだろう。 全裸のまま話すのは落ち着かず、武智は脱ぎっぱなしのシャツを掴み、ベッドに腰かけた。 「へぇ、上かぁ。見えないね。末っ子だと思ってた。」 「え、そうですか?」 ヒカルに思わぬ事を言われ、シャツに袖を通しかけていた手を止めて、武智は振り返った。末っ子という言葉は、若干納得いかない。 「何となく。妹と仲は良い?」 「たぶん普通だと思います。」 「その普通が分かんないんだよ。どんな事でケンカとかするの?」 武智は考えながら、今度こそシャツを羽織った。素肌にシャツは着心地が悪い。 「今はしませんが、子供の時はよくしましたね。テレビの取り合いとか、お風呂の順番とか、何でもない事ですよ。」 「いいね。楽しそう。彼氏は?」 ヒカルが目元を和らげ、楽しそうに聞いてくる。人の妹の話が面白いとも思えないが、本当に興味を持っているように見えた。ヒカルの事だから、これもまた演技かもしれないが。 「彼氏はちょこちょこいる様ですが、どうも長続きしませんね。」 「お兄ちゃん、見てるからじゃない?」 「え?オレですか?」 「村上さんがイイ男だから、比べちゃうんだよ。お兄ちゃん以上の男、探そうとしても中々見つからない。」 ふふっ―――と、ヒカルが嬉しそうに笑う。その表情を好ましく思った。 今日のヒカルは何だか少しガードが緩い気がする。少しは心を開いてくれたのだろうか。そう勘違いして、喜んでしまう自分に武智は呆れた。 「ね、村上さんは結婚したいと思う?」 「いえ、あまり。現実味がないですね。ヒカルさんは、子供とか欲しいですか?」 「まさか。」 冗談を聞いたように笑いながら、ヒカルが即答する。武智も家庭を大切にするようなタイプではないが、それ以上に、ヒカルに結婚や子供は似合わない。 「けど、家族は欲しいよ。」 零された声にハッとした。武智と目が合うと、ヒカルがふんわりと微笑む。 「欲しくない?ずっと一緒にいてくれる人が。」 ヒカルの目が泣いているように見えて、武智は咄嗟に口が開く。 ―――オレじゃだめですか。 しかし、そんな台詞を言える筈もなく、武智はひっそりと唇を結び、曖昧に頷いて返した。 本当は今も思っている。 あなたの側にいるのが自分であれば―――。

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