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Chapter 14―3

点々と明かりの灯ったマンションを見上げて、武智は肩を落とした。下からヒカルの部屋の窓は見えない。見えても明かりは付いていないだろう。 不在であるのは分かりきっていたが、武智は残業後の遅い時間にフラフラとやって来てしまっていた。 ―――いったい、どこに。 ヒカルが消えてから2日が経つが、音沙汰はない。由佳里にも動いてもらい、武智自身も目立たない程度に調べているが、未だにヒカルは行方不明の状態だ。 ぼんやりと立ち尽くしていると、ブブブ―――と、武智の胸元でスマホが着信を知らせた。寝不足による疲労で、右手を上げる動作が緩慢だ。 内ポケットから鳴り止まないスマホを取り出すと、そこに由佳里の名前が光っていた。 ―――何か分かったか!? 一気に眠気と疲労が吹き飛び、武智は素早くスマホを通話にした。 「村上です。」 『ハロープリンス。囚われのプリンセスが見つかったかもしれないわよ。』 プリンス、プリンセスという言葉に気を取られかかる。意味を飲み込むと、武智はスマホに食い付いた。 「見つかった?どこです?」 『今から地図の画像データ送るわ。そこにいる確証はないわよ。あなた、行くの?』 「はい、行ってみます。」 『こっちから応援はないわよ。』 由佳里が神妙な声を出す。 ヒカルひとりの為に、組織を動かす事はできないのは理解している。武智が動く事すら本来なら許されない。 「すみません。一人でどうにかします。」 『そう。なら、好きにしなさい。骨は拾ってあげるわ。』 「ありがとうございます。」 『ねえ、あなた、いつから情熱的な男になったの?』 由佳里の呆れたような声色に、くくっ―――と、武智は下を向いて笑った。 確かに、自分でも理解不能だ。 報われもしない想いなのに、ここまで来て仕事を放り出し、命の危険すらあるような場所に乗り込もうとしている。 仕方ない。 どうしようもなく、あの人が―――。 『馬鹿な男ね。』 宥めるような柔らかい由佳里の声が、風と共に夜の闇にゆるりと溶けた。

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