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Chapter 17―3

運転席に座ったヒカルに、武智は慌てて声をかけた。 「ヒカルさん、オレが運転しますよ。」 「いい。クスリしてる奴にさせるワケにいかない。」 ヒカルは取り合わず、不自由な左手でシートベルトをする。 「でも、ヒカルさん、怪我をして、」 「怪我してるの分かってて盛ってきやがった癖に。今さら、心配されてもな。」 はっ―――と、ヒカルに鼻で笑われる。 確かに、ヒカルの口に欲望を吐き出した一度目で、武智の体の力はかなり戻っていた。 止めようと思えば止められただろうが、武智はあっさり理性を捨て、怪我人のヒカルに襲いかかってしまったのだ。クスリのせいだけとも言えず、思わず苦笑いが出る。 「本当にすみませんでした。これ以上、悪化したらいけないんで、オレが、」 「うるさい。薬中野郎と心中する気はないんだよ。死にたかったら、ひとりで死ね。」 ヒカルに忌々しげに吐き捨てられる。 ひどい言われようだ。 それに、随分と口が悪い。やはり、こちらが素のヒカルなのだろう。 毒のような色気を纏ったのが演技だとすると、随分と分厚い猫を被っていたらしい。 「さっさと助手席に座れ。おまえのせいで時間がない。置いてくからな。」 ハンドルを握り今にも発進しそうなヒカルの様子に、抵抗は諦めて助手席に乗り込んだ。 武智がシートベルトをする前に、勢いよく車が走り始める。一気にメーターが70まで上がった。 繊細そうな見かけに反して、実際はどうやらかなり乱暴らしい。右へ左に体がブレながら、武智はおかしくなってきた。 口元を押さえて笑っていると、ヒカルがチラリと視線を流して、不審そうな顔をする。 「気持ち悪いぞ。おまえ、大丈夫か?」 「何がです?」 投げられた言葉の意味が掴めずに、武智は首を傾げた。 「いや、まあ、仕方ない。」 クスリの副作用でハイになっている―――と、思われたのだと遅れて気づく。多少はそうなのかもしれない。 罵られてばかりなのに、ヒカルとの会話が無性に楽しい。 「そうだ。連絡は入れなくていいのか?上司に。」 「あ、スマホ、壊されてしまって。」 「じゃあ、オレのを使え。」 無造作にスマホを放られ、それが武智の額にぶつかりそうになり焦って受け止めた。 本当に乱暴だ。

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