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Chapter 18―1
深夜2時少し前、西港の錆び付いた倉庫へ、怪しげな車が一台、また一台と入っていく。
全部で四台。
普段なら誰も目撃する者はいない筈の時間帯だが、今日に限っては複数の目が獲物を前にした肉食獣のように光っている。
『行くわよ。』
由佳里から無線で合図を受けて、村上武智は倉庫の中へ侵入を開始した。
入り口は手前にひとつだが、倉庫の後ろ側には大きな天窓がある。三人一組が前と後ろにふたつ。前には由佳里がおり、武智は後ろから。
少数精鋭―――と云えばカッコよく聞こえるが、ただの人員不足だ。
階下を覗くと、喜原遼基の頭が見えた。その隣には、山口組の組長である山口英次が、向かい側には中国人のウォンがいる。
各々連れているのは少数だ。
ザッと見渡したところ、運転手を合わせても敵は全員で12、3人ほどしかいない。
前もって知らされていた情報通りだった。これなら少数でも何とかなるだろう。
「―――え?」
ヒカルらしき姿を発見して、思わず声が漏れた。
いや。らしき―――ではなく、あれは間違いなくヒカルだ。
遼基の後方に、ヒカルがぼんやりと立っている。いつの間に着替えたのか、さっきまでの服装と違っていた。真っ黒なスーツがよく似合っている。
―――ワナ、ではないか。
現場に登場するとは聞いていなかったので、一瞬こちらが嵌められたのかと思った。しかし、その可能性は即座に振り払う。武智たちを罠にかけても何の得にもならない。
ヒカルへの疑惑が消えれば、次ぎにその身が心配になってくる。彼が桁外れに強い事は、実際にこの目で見ているが、左手の怪我は浅いものではない。
これから乱戦になるのだ。
―――大丈夫だろうか。
ずっとヒカルを観察している訳にもいかず、武智は視線を引き剥がし、仲間に続いて階下へ降りた。右手に銃を持ち、安全弁を外す。
実弾ではなく、ただの麻酔銃だ。それでも、久しぶりに感じる重さに、気分が高陽する。
すでに取引を始めたらしい遼基たちの背後に潜むと、タイミング良く由佳里から連絡が入った。
『準備は?』
「できました。」
『では、全員―――』
突入―――と、言う由佳里の声を聞きながら、武智は跳ねるように飛び出した。
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