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Chapter 18―2

警察だ、その場を動くな。動けば撃つ―――と、こちらが警告したものの、大人しく従うような相手ではもちろんない。 ただっ広い倉庫内は、一瞬で銃弾戦となった。 ―――まず、ひとり。 武智の放った麻酔銃の弾が当たり、山口組組長の傍にいた体格の良い男が派手に倒れる。山口英次はと云うと、あたふた走り出した所を、誰かの流れ弾を食らって背中から血を流していた。 芋虫のようにもがく姿が無惨だ。 あまりに憐れで武智は、山口に麻酔銃を撃ち込んだ。これで痛みを感じずに、安眠できる事だろう。 ―――次は、 警察に前と後から挟まれて、あちらさんは統率も何もなく右往左往していた。ウォン一派だけが慣れた様子で対応しているが、由佳里側がすぐに鎮圧する筈だ。嬉々と暴れまわる由佳里の姿が思い浮かび、ウォンに少しだけ同情する。 武智はそんな事を考えながら、遼基の姿を探して走った。 しばらく壁際を突き進むが、遼基どころか、手下の姿すら見つけられない。引き返すべきかと迷った時に、見慣れた後ろ姿を見つけた。 ヒカルだ。 その足元に人が転がっており、ガシガシと右足で乱暴に踏みつけていた。 「ヒカルさん。」 武智が声をかけると、ヒカルが振り返る。ざっと見たところ、新たに怪我をしている様子はない。 「村上さん、いい所に来てくれた。」 近寄る武智へ向けて、ヒカルが嬉しそうに笑う。 いつもの、見慣れているヒカルに戻っていた。毒のような色気を垂れ流し、所作のひとつで男の目を惹き付ける『愛人のヒカル』だ。 これが偽りと分かっていても、乱暴な雰囲気のあのヒカルの方が、幻だったかのように感じてしまう。頭が混乱する。 「拘束した方がいいよね?手錠か、結束バンドみたいなモノ、持ってる?」 「あ、はい―――」 手錠を探りながら、ヒカルに容赦なく踏みつけられている人物を見下ろせば、遼基だった。ピクリとも動かないが、大丈夫だろうか。 気を失っている遼基の脇に、武智が膝を付くと、ヒカルが足を退かして後ろに下がった。 ガチャ―――と、手錠を遼基の両手首にかけると、その体勢のまま武智は無線を手にした。由佳里に報告をしようとしたのだ。 油断していたつもりはなかったが、きっと注意が散漫になっていたのだろう。 突然、背後からすごい力で肩を引き寄せられ、バランスを崩して武智の体は左側に傾いた。 ―――え? 「ぐっ―――!」 耳元で呻き声が聞こえ、武智に覆い被さっているのがヒカルだと気付く。体勢を崩した状態で上から体重がかけられ、ドサリと二人して床に倒れた。 男二人ぶんの重みがかかり、左腕に鈍い痛みが走る。 「ヒカルさん?」 武智が身を起こすと、ヒカルの体がズルリと落ちていく。全く力の入っていないヒカルの体を支えようと、武智は手を伸ばした。 ぬるっ―――と、生暖かく濡れた感触がする。 ヒカルから手を離し自分の手を見ると、真っ赤だった。 血。 ヒカルの血だ。

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